ビジュアル・ニュース解説

「ビッグデータ」でどんなことができるの?

2014.2.3 掲載
「ビッグデータ」という言葉を見聞きする機会が増えています。情報端末の進化やソーシャルメディアなどのIT(情報技術)サービスの普及にともない、多様で大量のデジタルデータが日々生まれるようになりました。これがビッグデータです。データを処理・蓄積する情報機器の性能や分析技術が飛躍的に向上したことにより、ビッグデータをマーケティングや商品開発、業務改善などビジネスに生かす企業が増えています。国や自治体も注目しており、防災や医療、農業など様々な分野で活用が期待されています。今回はビッグデータとは何か、企業の活用事例、本格的な普及に向けた課題などについて解説します。

4. 課題はスペシャリストの育成と個人情報保護

4. 課題はスペシャリストの育成と個人情報保護
 ビッグデータ活用の本格的な普及に向けて課題もあります。一つはビッグデータを適切に活用するための人材の確保・育成です。データを分析しても「夏にクーラーが売れて、冬にストーブが売れる」といった当たり前のことが分かるだけでは意味がありません。ビッグデータは有益な情報や知識を導き出して初めて「宝の山」となります。そこで注目されているのが「データサイエンティスト」です。データサイエンティストは統計解析の知識だけでなく最新のITにも通じ、経営や生活の課題を顧客や利用者の視線で捉えて実際の対応につなげる能力を持ったスペシャリストです。ただ、その数は大幅に不足しており、ビッグデータの重要性が高まるのにつれて、企業間の獲得競争が激しくなっています。人材不足を解消するため、13年に発足した産学連携の「データサイエンティスト協会」が必要な知識や実務経験レベルを定めて認定制度の土台を作ろうとしているほか、大手企業も独自に人材育成に努めています。
 もう一つの大きな課題は個人情報の取り扱いです。東日本旅客鉄道(JR東日本)は13年、ICカード乗車券「Suica(スイカ)」の利用データの外部販売を中止しました。データは匿名で処理されていましたが、自分の行動記録が知らないうちに第三者に利用されるとしてスイカ利用者が反発したためです。これに対応し、政府は個人情報の保護を前提としたビッグデータ活用のルールづくりを進めています。
 今はビッグデータを利用する企業がまだ限られ、私たちがその有用性を実感する機会は多くありませんが、政府は成長戦略の一環としてビッグデータ活用に着目し、普及を推し進めています。利用ルールづくりなどの環境が整い、活用に弾みがつけば、ビッグデータによる生活の変化を実感できるようになるかもしれません。
2014年2月3日掲載