ビッグデータの利用は医療や農業、社会インフラなど様々な分野に広がっています。東京大学などはがんや糖尿病などの患者30万人分のデータを収集し、病気の原因究明や副作用の少ない薬の開発に取り組んでいます。富士通はイオンと共同で畑にセンサーとカメラを設置し、土壌中の水分量や温度、湿度などのデータを収集して、農作物の生産性や品質を向上させています。
現在、利用が進んでいるデータは主として「ヒト」の行動に起因して生まれるものです。これに対して、今後注目されそうなのが「モノ」から生まれるデータの利用です。エレベーターやビルの空調設備、発電システム、自動車や電車、飛行機など、様々な機器や設備に各種センサーを取り付けて、絶えず計測・記録される稼働状況のデータを詳細に分析することで、事故や故障を未然に防ぐことを目指しています。
すでに取り組みは始まっています。日立製作所は火力発電所のガスタービンや高速鉄道にセンサーを取り付けて稼働状況を監視し、保守管理に生かしています。NTTデータは12年に東京港に完成した東京ゲートブリッジの要所に振動やひずみなどを計測するセンサーを取り付けて毎秒数千件のデータを収集し、劣化を早期に検知できるようにしています。
あらゆるモノにセンサーや通信装置などを組み込み、ネットを通じてつなげることで生まれる新たな価値・サービスや、それを実現する技術は「インターネット・オブ・シングス(IoT=モノのインターネット)」と呼ばれます。