ビジュアル・ニュース解説

図書館の最新トレンドについて知る

2013.8.5 掲載
図書館が様変わりしています。国立国会図書館が蔵書の電子化を進めて一部をネット上で公開したほか、東京都の千代田区立図書館が電子書籍の貸し出しを始めるなど、いわゆる「電子図書館」の動きが広がっています。図書館を駅ビルの中に開館したり、運営を民間に委託しカフェを併設したりするなど、従来のイメージを打ち破る意欲的な公共図書館も増えています。今回は公共図書館の電子化・民営化の動きを中心に図書館の新潮流について解説します。

3. 国会図書館の蔵書の一部はネットで閲覧

3. 国会図書館の蔵書の一部はネットで閲覧
 日本の電子書籍のタイトル数は欧米に比べるとまだ少なく、電子図書館で読める書籍は限られています。国内の出版業界は電子書籍により紙の書籍の売り上げが落ちることを懸念し、電子化が遅れ気味でした。
 国内の著作権などの権利関係が複雑なことも電子書籍の拡大の足かせになっています。電子書籍が普及している米国では、書籍を電子化してネット上で配信する権利を出版社が持つことが多く、スムーズに電子化・ネット配信ができます。これに対して日本では、電子化・ネット配信には別途、著作権者の許諾を得ることが必要です。古い既刊本は著作権者が分からないことも珍しくなく、著作権者を探し出すだけでも多大な手間とコストがかってしまいます。また、日本では著者と出版社が交わす出版契約が口約束による場合が多いことも権利調整が難しい一因です。
 電子図書館サービスの普及に積極的に取り組んでいるのが国会図書館です。国会図書館には前述の納本制度により国内のあらゆる出版物が収蔵されていますが、基本的に貸し出しをせず閲覧・複写サービスのみを提供しています。近年は、収集・集積するさまざまな資料を電子化して保存し、公開する「デジタルアーカイブ」化を進めています。
 09年に著作権法が改正され、国会図書館に納本された出版物は著作権者や出版社の許諾がなくても電子化できるようになりました。ただし、利用は国会図書館内だけに限られます。長尾真・前国会図書館長はこれを拡張して、デジタルデータ化した書籍の個人などへの有料配信を提唱しましたが、出版業界の反発が強く実現には至っていません。
 国会図書館は著作権保護期間の満了などで著作権処理が終わった出版物を逐次電子化し、02年10月に一般利用者向けの電子図書館サービス「近代デジタルライブラリー」をスタートさせています。電子化した図書など約34万点がネット上で公開されており、誰でも無料で閲覧できます。なお、国会図書館が提供するデジタル化資料の総数は200万点以上に上り、著作権処理が完了していないものの閲覧は館内のみです。
2013年8月5日掲載