近年、公共図書館はインターネットへの対応を進めており、ネットを通じた所蔵資料の検索や貸し出し予約サービスなどは当たり前になっています。ネット上で電子化(デジタル化)された各種の資料を閲覧したり、電子書籍データをダウンロードしたりできる公設の「電子図書館」も登場しています。
東京都の千代田区立図書館が07年、公共図書館として初めて電子書籍の一般向け貸し出しサービス「千代田Web図書館」を開始しました。ネット社会の情報格差をなくす狙いから導入され、13年3月現在の取り扱い出版社数は44社、提供するコンテンツ数は約5600タイトルに上ります。利用者はあらかじめ専用の閲覧ソフトウエアをパソコンなどの自分の端末にインストールして、電子書籍データをダウンロードして閲覧します。まだ例は少ないですが、電子図書館サービスは他の公共図書館にも広がりつつあります。
図書館が電子化されると、利用者はネット環境さえ整っていれば、いつでもどこでも手持ちの端末で閲覧できます。図書館にとっても、紙の書籍のように膨大な保管場所が要らず、破損など劣化の心配がない利点があります。
書籍を電子化すると不正複製の恐れがありますが、千代田Web図書館は「DRM(デジタル著作権管理)」と呼ばれる徹底した著作物の保護技術でこの問題を解決しています。書籍データを暗号処理し、利用する際の認証を厳格にしており、認証が済むと暗号が解けて読める仕組みです。貸し出し期限を過ぎるとデータは自動消去され、貸し出し期間中の複製や印刷はできません。
また、紙の書籍は所蔵が1冊なら1人しか借りられませんが、デジタルデータである電子書籍は多数の人が同時に閲覧できます。ただ、千代田Web図書館は出版社や著作者の権利を守るため、1冊の電子書籍は1人しか利用できないようにしています。