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急激に進む円安・ドル高、24年ぶりに円買い介入

2022.11.21 掲載
外国為替市場で円安・ドル高が進んでいます。2022年10月20日には約32年ぶりに一時1ドル=150円台をつけました。急激な円安に歯止めをかけるため、政府・日銀は同年9月、10月に24年ぶりに円買い・ドル売り介入に踏み切りました。今回は円安・ドル高が進む背景や為替介入がどのように実施されるのかなどについて解説します。

2.外貨準備のドルを売って円買い介入し円高方向に誘導狙う

2.外貨準備のドルを売って円買い介入し円高方向に誘導狙う
 過度の円安進行を抑えるため、政府・日銀は22年9月22日に外国為替市場で円を買ってドルを売る為替介入を実施しました。円買い・ドル売り介入は1998年6月以来、約24年ぶりで、介入額は2兆8382億円と1日あたりの円買い・ドル売り介入額としてはそれまでで過去最大でした。この介入で円相場は1ドル=146円近くから一時140円台まで上昇しましたが、3週間後には介入前の水準に戻りました。政府・日銀は同年10月21日には実施を明らかにしない「覆面介入」に踏み切り、円相場は翌22日未明にかけて一時1ドル=144円台まで7円以上急騰しました。一時4円以上円高に振れた同月24日にも円買い介入があったとの観測があり、財務省が発表した22年9月29日~10月27日の為替介入実績は6兆3499億円とさらに膨らみました。
 為替介入の決定権は財務相が持っており、多くの場合は財務省の国際部門トップである財務官が事実上、介入の判断を下します。日銀がその代理人として実際の通貨売買を担います。円買い・ドル売り介入の場合、日銀は財務省が管理する外国為替資金特別会計と日銀が保有する外貨準備のドルを民間銀行に売って同時に円を買います。民間銀行は市場で日銀から買ったドルを売り、日銀に売る円を買います。この取引で市場の円の需要を増やし、円高方向への誘導を狙います。日本の夜間や休日の介入は海外市場で行いますが、直接取引ではなく各国の中央銀行に委託することもあります。米国市場は連邦準備銀行のひとつのニューヨーク連邦準備銀行、ユーロ圏は欧州中央銀行(ECB)などが委託先です。
 円買い・ドル売り介入の原資は外貨準備のため、その残高が介入の上限となります。22年10月末の外貨準備高は1兆1945億ドル(約175兆円)あります。そのうち海外の中央銀行などに預けている外貨預金約19兆円を除いた残りの大半は米国債など外貨建て証券で運用されており、米国債を売却すれば米金利に上げ圧力がかかって米との摩擦を引き起こす可能性があります。また、米国は為替相場を不当に操作しているとする為替操作国の指定基準の1つに、外貨の購入が過去12カ月のうち8カ月以上に及び、介入額が国内総生産(GDP)比2%以上であることを挙げており、日本だとその額は11兆円程度になります。このため、今後の円買い介入の余地はさらに限られます。
 為替介入には複数の通貨当局がそれぞれの資金を使って同時か連続して実施する協調介入もあります。投入する資金の規模が大きくなるため、相場を動かしやすくなります。22年9、10月の介入は日本だけの単独介入とみられます。円高・ドル安になると米国の輸入物価が上がりやすくなるため、インフレに苦しむ米国はドル高が望ましいと考えており協調する局面ではないからです。
2022年11月21日掲載