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米国の大統領と議会~米政治の基礎を知る

2016.12.19 掲載
2017年1月20日に米国大統領にドナルド・トランプ氏が就任し、新政権が発足します。トランプ氏は大幅な減税や巨額のインフラ投資、環太平洋経済連携協定(TPP)からの撤退、温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」からの離脱など様々な公約を掲げていますが、議会の協力なしには実現が困難なものもあり、議会と良好な関係を築けるかが注目されます。今回は米大統領の役割と権限、議会との関係などについて解説します。

1.行政権に限られる大統領の権限

1.行政権に限られる大統領の権限
 米国の大統領は国家元首で行政府の長です。軍の最高司令官でもあります。連邦最高裁判所判事の指名や各省の長官と幹部職員の任命、条約の締結などの権限を持つほか、議会の承認を得ることなく行政機関に命令する大統領令を出せます。首都ワシントンのホワイトハウスに居住し執務します。任期は4年で2期まで務められます。
 米国の大統領は国のすべての権力を握る絶対的な指導者だと思うかもしれません。日本のように行政権が内閣にある議院内閣制の国と違い、米国の行政権は大統領だけが持ち、選挙で国民の信任を得ているため、日本の首相と比べれば政治を主導する力が大きいのは確かです。
 ただ、大統領の権限は行政権の範囲にとどまり、立法権は連邦議会にあるため、法案の立案や予算の決定は議会が担います。大統領は議会が可決した法案に拒否権を発動できますが、上下両院がそれぞれ3分の2以上の賛成で再可決すれば法案は成立します。
 米国は他の大統領制の国と比べ、行政と立法が厳格に分かれているため、大統領と議会が政策を巡って激しく対立することがあります。大統領が思い通りの政治運営をできるかどうかは、議会をどれだけ掌握できるかに左右されます。
2016年12月19日掲載