米国では16年11月に大統領選と併せて上下両院の議会選が行われ、トランプ次期大統領が所属する共和党が両院とも過半数を維持しました。米国では共和党と民主党の二大政党制が確立しており、大統領の所属政党と議会で多数を占める政党が異なる場合がしばしばあります。今回はトランプ次期大統領が所属する政党が議会で多数派になったため、本来なら次期大統領にとって政策実現のための環境が整ったといえるはずです。
しかし、トランプ氏は大統領選で共和党主流派と対立したため、双方の間には溝があります。トランプ次期政権が共和党主流派から幅広い支持を得られるとは限らず、新大統領の政権基盤は盤石ではありません。
トランプ次期大統領はオバマ政権下の主要政策の多くを覆すと主張しており、TPPからの撤退やパリ協定からの離脱のほか、選挙期間中には医療保険制度改革法(オバマケア)の撤回なども公約として掲げました。公約の多くは実現するのに議会の協力が欠かせません。話題を集めた「メキシコとの国境に壁を建設する」との過激な公約も、建設するには予算を決定する議会の協力なしには実現できません。
大統領選に勝利した後、トランプ次期大統領は主席補佐官に共和党全国委員長のラインス・プリーバス氏を起用するなど、共和党主流派との協調を重視する姿勢を見せています。今後、トランプ次期大統領が共和党主流派にどこまで歩み寄れるかや、共和党主流派が新大統領の過激な路線とどう折り合いをつけるのかが注目されます。