デカップリング

　国や地域間の投資や通商を規制で阻害し、連動させない動きのこと。「経済分断」と訳すことが多く、米中対立の文脈でよく使われる。2018年、トランプ政権下の米国が中国製品に高い関税を課し、中国が米国製品への課税で報復したことで米中貿易戦争が勃発。経済安全保障を優先するバイデン政権も半導体など先進技術の輸出規制や、自国での生産を促す法制度の導入を進め、米中の分断が深まった。
　超大国の対立は、両国を取り巻く他の国にも影響を与えた。中国は最近までオーストラリア産の大麦に高関税を課すなどしていた。新型コロナウイルス禍で国境を超えた往来が難しくなったことも、分断が深まる要因になった。
　中国との経済関係を重視する欧州発で、デカップリングに代わり「デリスキング（リスク低減）」という考え方も広まってきた。サプライチェーン（供給網）の過度な依存や先端技術の流出を防ぎつつ、中国との経済関係は維持する。5月の主要7カ国首脳会議（G7広島サミット）の首脳宣言にも採用された。