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マクロ経済スライド

2022.10.1(土) 掲載
 公的年金の支給額は物価や賃金の伸びに合わせて改定される。日本は現役世代の人口減で年金の担い手が少なくなる一方、平均余命は延びて年金受給者が増えている。これらを踏まえて年金額を抑える仕組みをマクロ経済スライドと呼ぶ。2004年の制度改正で導入された。厚生年金の保険料率は収入の18.3%で固定されており、スライドにはその範囲内に給付水準を抑える役割がある。
 給付の抑制を続けていけば、年金財政は固定した保険料の範囲でやり繰りができるようになり、マクロ経済スライドによる調整は終了する。この時点で標準的な年金受給世帯が受け取り始める年金額は現役世帯の手取り年収の約5割(所得代替率)になると見込まれている。
 マクロ経済スライドは年金の支給額が前年を下回らないように発動される。物価や賃金の伸びが小さく支給額があまり増えないときは部分的な発動となり、賃金が下落し年金支給額も減るような場合は見送りになる。給付抑制の積み残し分は次年度に繰り越す「キャリーオーバー制度」が18年度から導入された。繰り越しが増えれば物価が大幅に上がった時に年金が十分に上がらず、問題になるとの指摘もある。
マクロ経済スライド