半導体産業を当初リードしたのは米国で、日本は米国を追いかける立場でした。70年代になると大型コンピューター向けに需要が伸びていたDRAM開発に日本の電機メーカーが参入。品質の高さと安い価格が評価され、80年代には日本勢が半導体の世界シェアの半分を占めるまでになりました。
しかし、90年代に入るとDRAM需要はパソコン用にシフトします。パソコンに必要なDRAMは大型コンピューターより少なくなる一方、韓国と台湾のメーカーが急速に台頭。なかでも韓国のサムスン電子は巨額の設備投資で製造コストを大幅に引き下げる戦略で世界シェアを伸ばしました。また、DRAMで日本にシェアを奪われた米国勢はMPUの開発・製造では他を寄せ付けませんでした。インテルは高速でデータ処理ができるMPUの開発に世界で初めて成功。MPUがパソコンに搭載されたことで急成長し、現在も半導体メーカーとして世界トップクラスの売上高を誇ります。
韓国・台湾勢の価格攻勢に押され、米国メーカーに高付加価値の製品で突き放された日本企業は、半導体市場でシェアを失っていきました。技術を結集し集中的な大型投資をしてこの状況を打開するため、90年代後半から国内の半導体業界の再編が進みました。99年にNECと日立製作所のDRAM部門が統合してNEC日立メモリ(後に社名をエルピーダメモリに変更)が誕生。2003年には日立と三菱電機のシステムLSI事業などが統合してルネサステクノロジとなり、10年には同社とNECエレクトロニクスが経営統合してルネサスエレクトロニクスが発足しました。
しかし、再編が進んでも国内の半導体産業は競争力を取り戻せませんでした。12年2月にエルピーダメモリが経営破たんし、13年7月に米マイクロン・テクノロジーに買収されました。現在の半導体の世界市場シェアはサムスン電子などの韓国勢や、インテル、クアルコムなどの米国勢が上位を占めます。日本勢で上位に残る東芝は、会計不祥事の影響でメモリー子会社を米ベインキャピタルが率いる日米韓連合に売却する方向です。