みんなの日経読みこなし

企業読者インタビューVol.5 野村マイクロサイエンス 水野 学様

社内資料や研修等に日経を活用しているという【東証プライム上場】野村マイクロ・サイエンス株式会社の人事部長 水野 学さんに、日本経済新聞を読み始めたきっかけや仕事への活用法などを語っていただきました。仕事にもプライベートにも役立つ、水野さんが特に注目している連載記事も紹介しています。

人事の業務に必要な資料作り
新聞の引用で説得力が増す

30代の営業時代の出来事で
日経購読の必要性を痛感

——日経を読み始めたのはいつからですか? きっかけはありましたか?
 前職で営業を担当していた30歳の頃です。当時のお客様が「きょうの日経に載っていた記事だけど……」と、営業なら当然知っているというように記事について話をされた時に、購読していなかった私は話題についていくことができず、情けない気持ちになったことがありました。その時の気持ちを20年以上たった今でもよく覚えていますから、私にとって大きな出来事だったと思います。
 当時は愛知県に住んでいて、子供の頃から中日ドラゴンズのファンだったこともあり、それまでは地元紙を購読していたのですが、すぐに日経に切り替えました。以来、日経一筋です。
—— 水野さんは営業や購買部門を経て、人事部に異動し、2023年4月より現職(人事部長)に就かれました。職種が変わっても日経を読むことは役立ちますか?
 営業は社会の動きに敏感であることを求められますから、日経は当然役立ちます。また、当社は水処理プラントメーカーですので、購買部門はポンプやろ過膜などの資材を少しでも安く購入し、コストを下げることが重要な業務です。メーカーとはその業績のことも話題に挙げながら、価格交渉をすることもあります。営業や購買部門での業務を行っている際に日経にて、取引先の設備投資計画の記事を読んで、自分はこの計画に関わっていると実感することもあります。
 ポジションが変わることで注目するキーワードは変わっても、私にとって日経からの情報収集は欠かせません。もう、生活の一部になっていますね。
—— 人事部では日経をどのように生かしているのですか?
 私は人事部で主に人材の採用や研修に携わっています。業務の中で企画書やプレゼンテーション用の資料を作ることが多いのですが、その際に新聞記事をよく引用しています。日経を引用することで説得力や信ぴょう性が増します。
 先日も日経に企業の研修費用に関する記事が掲載されていたので、この記事を引用して、役員へのプレゼンテーションをしました。一般的に企業が社員1人あたりどのぐらいの研修費用をかけているか、また当社がどの位置にいるかを把握し、現状を説明するために用いたのですが、こうした新聞記事の情報があることで説得力が増しますし、役員にとってもよい判断材料になります。
—— 資料に記事を添付することで、読む人への強いメッセージになりますね。
 記事によって説得力が生まれると、ただ事実を並べた資料と読み手の印象が変わると思います。
 学生向けのインターンシップで決算書について講習をしているのですが、その中で自己資本比率と流動比率という2つの重要な経営指標があることを説明しています。この説明の際にも日経の記事を参考資料として取り上げました。記事の中で、プロ野球の12球団の体力を測る指標として、各球団の自己資本比率と流動比率が列記されており、学生の皆さんにこれらの指標の重要性を示すことができました。

採用や研修に直結する記事から
趣味の分野まで愛読記事が多数

—— 採用担当者として、就職活動中の学生にも日経を読んでほしいと思われますか?
 費用もかかることですから、学生の皆さんに「必ず読んだほうがいい」と強く言うことはできません。しかし、私個人の経験を踏まえても、日経から得られる知識は、ビジネスパーソンにとって欠かせないものです。
 当社では新人社員の研修で、社長が講話で毎年日経を紹介しています。社長講話の後、新入社員に日経に少しでも興味をもってもらえたらと、私個人の1週間分の新聞を研修会場に並べて自由に手に取れるようにしています。
 日経は経営者や企業の幹部だけが読む新聞ではないと思います。事実、経済だけではなくて、文化芸術やスポーツなどの記事も充実しています。最初から硬い新聞だと決めつけずに、まずは気軽に読んでみてほしいと伝えています。
—— 水野さんが特に注目している連載記事はありますか?
 まず新卒学生の採用は人事部としても重要な業務なので、仕事柄欠かせないのが、毎週火曜日の夕刊に掲載される「就活のリアル」です。面接での心構えや対応の仕方など、就活で役立つことが書かれているので、ぜひ学生の皆さんにも読んでほしいと思います。
 そのほか、3カ月に1度掲載される「主要30業種の天気図」は必ずチェックします。当社の主力製品は半導体の製造に欠かせない超純水製造装置です。主要取引先が半導体業界なので、毎回「半導体が晴れだといいな」と願いながら、今後の見通しに注目しています。また「私の課長時代」というコラムも、現在社長として活躍されている方々にもさまざまな苦労があったんだと考えさせられることが多く、楽しみにしている記事の一つです。総合1面のドキュメンタリー記事「迫真」には、さまざまなニュースの裏事情が関係者のコメントとともに掲載されていて、ニュースの裏読みをする感覚で、興味深く読んでいます。
 また、趣味の一環として読んでいるのは、文化芸術の記事。私は歌舞伎ファンで、尾上菊之助さん、市川猿之助さんが好きなんです。こうしたひいきの役者さんの公演の論評の記事を読むのも楽しみです。
—— 隅々まで丁寧に読まれていますね。1日の中でいつ日経を読まれているのですか?
 朝起きてから20分ほど、ざっと大きな記事をチェックするのが習慣です。やはり採用や就職、転職といった業務に直結するキーワードには敏感に反応します。また、当社と関わりが深い半導体や液晶、医薬といったワードに関連する記事は要チェックとなります。
 朝刊で読みきれなかったものは、帰宅後に20分ほどかけて夕刊と一緒に読みます。合算すると、1日せいぜい40分ほどでしょうか。平日は新聞をなかなかじっくり読めないのが残念なところ。予定のない週末はゆっくりと日経が読めるので、「明日は新聞をじっくり読もう」と前日から楽しみにしていることもあるんですよ。
私にとって日経を読むことは生活の一部になっていますね。

幅広い知識を得ることが
社会人としての糧になる

—— あえて紙で新聞を読むことはどんな魅力があると思われますか?
 キーワードを入力するだけで記事が検索できるなど、電子版ならではの魅力があり、切り替えようかと考えることもあります。ただ、視読性の高い紙の新聞は、大きな記事と記事の間に挟まれるようにレイアウトされた小さな記事の中から、興味を引かれる情報に出合うことができます。その点は、紙で新聞を読むうえで大きな魅力です。
 私は宇宙や天文に興味があるのですが、人工衛星の打ち上げや宇宙飛行士の募集などは大きな記事になることが少ないので、紙の新聞で関連するニュースを見つけるのを楽しみにしています。
—— 水野さんは公害 防止管理者、社会保険労務士、通関士、知的財産管理技能士、日商簿記、ファイナンシャルプランナーなど、数々の資格試験に合格されています。一見すると人事の業務に直接関わりがない資格も取得しておられますね。
 簿記の資格を持っていれば経理部門の人と話をした時に話がスムーズになりますし、通関士の資格があれば貿易部門の人、知財の資格があれば特許の担当者と、それぞれの分野についての話ができるようになります。
 人事部はさまざまな部署と関わることが多いので、各部署がどのような業務を行っているかを把握することが必要です。例えば、他部署に異動した方がより力を発揮できる社員がいることがあります。そういう視点を踏まえて、社員一人ひとりにどういった能力があり、各部署でどのような人材が求められているかを把握するためにも、資格の取得は有用と感じています。
 また、採用の際に応募者の履歴書に記載されている資格名を見て、その応募者のオフの時間の過ごし方や性格などがある程度想像できます。
 インターンシップや社員の研修の際にも幅広い知識があれば役立ちます。そういう意味で、スペシャリストではなくても、ユーティリティープレイヤーでいたいと常々思っています。
—— 日経での情報収集や幅広い知識の吸収など、見識を広げるために多くの時間を費やしておられますね。
 もともと情報を得ることは好きなので、苦になることはありません。
 世の中は移り変わっていきますから、知識や情報も常にメンテナンスしていかなければなりません。資格取得などを通して幅広い知識を得ることも、新聞を読んで今社会で何が起こっているかを知ることも、どちらも大事です。一生勉強だと思っています。

Interviewee

【東証プライム上場】野村マイクロ・サイエンス
人事部長
水野 学

大学卒業後、2社を経て32才の時に野村マイクロ・サイエンスに入社。名古屋営業所、掛川営業所に勤務の後、資材部から人事部へ。
現在は主に採用や社員研修、人事異動に携わる。プライベートでは自身が所属する有志のファイナンシャルプランナーのコミュニティーの毎月の定例勉強会に参加している。

役職等は2023年1月12日現在のものです