みんなの日経読みこなし

企業読者インタビューVol.4 NTTデータ経営研究所 坂井田 萌様

高校生の頃から日経を読み始めたという坂井田 萌さんに、日本経済新聞を読み始めたきっかけや仕事への活用法、新聞購読をご自身の力にしていくコツや新聞を活用した仕事上でのコミュニケーション術、電子版機能の活用法など、さまざまな切り口から語っていただきました。

電子版機能を使いこなし、
新聞から得る情報を効率よくビジネスに活用する。

仕事柄、医療やヘルスケアの関連情報の収集に活用

——日経を読み始めたきっかけを教えてください。
 もともと両親が購読していたので、日経は子供の頃から家にあるのが当たり前の存在でした。私が読み始めたのは高校生の時です。国語の勉強のためにコラムの「春秋」を毎日読んでいた仲の良い友人から、「漢字や表現方法を学べるからいいよ」と勧められたのがきっかけです。当時は読んでも難しくて、わからない言葉もたくさんありましたが、毎日読むことで国語の力が上がったのではないかと思います。
 その後、就職活動対策で本格的に読むようになりました。私が志望していた広告業界に就職するためには、最新の情報を知っているかどうかが勝負になります。1面で取り上げられた記事が当日の面接で話題に上がることもあり、毎日最低限知っておくべき情報の収集手段として読んでいました。
—— 社会人になった今、どのような記事を読んでいますか? また業務にどのように生かしていますか?
 2年前にNTTデータ経営研究所へ入所後は、医療やヘルスケアの分野で調査や事業化支援、マーケティング支援など行政や企業をサポートするコンサルティング業務を担当しています。医療やヘルスケアの分野の現状について新聞で関連記事を読んだり、これから進行するプロジェクトの準備段階に記事を検索したりするなど、新聞から得る情報をビジネス上で活用する場面も多々あります。
 現在動いているプロジェクトに直接関連する記事だけでなく、デジタルマーケティングなど個人的に関心のある記事にも目を通します。というのも、別の業界の取り組みがヘルスケアに横展開できるケースがあるからです。近年はさまざまな業界が一丸となって一1つの事業やサービスをつくり出すことも多いので、ビジネスパーソンとして幅広く業界の現状を把握しておくのも必要だと感じています。
—— 新聞でどのように情報を拾うのですか?
 新型コロナウイルスの感染拡大以降、メンタルの不調を抱える人が増えています。昨年、官庁の働く人のメンタルヘルスに関する調査事業に携わりました。プロジェクトの初期、「そもそもメンタルヘルスの業界が今どうなっているのか」「どんなサービスがあるのか」を知ろうと、キーワード検索で“メンタルヘルス”や“メンタルヘルステック”“ウェルビーング”といった関連ワードでニュース記事や連載記事を確認しましたが、こうした記事の使い方が多いですね。その上で、さらに詳しく調べたい事項について、弊社で利用している調査ツールで深読みします。
—— 坂井田さんは新聞を主にいつ読んでいますか?
 私は電子版を読んでいるのですが、通勤時間の10分ほどで気になる記事をすべて読み終えます。前職ではデジタルマーケティング関連の業務をしていたのですが、情報が広がるのが早い業界だったこともあり、速読しないと間に合いませんでした。それで鍛えられて、新聞を読むのが早くなったのかもしれませんね(笑)。今でも、その時の読み方が習慣になっていて、タイトルだけをざっと見て、気になるものをピックアップして速読しています。

欲しいキーワードや情報を即入手できるアプリを愛用

—— 紙ではなく、電子版で読む利点はなんでしょうか?
 電子版だと、読みながら気になる単語や理解が足りない単語などを選び、検索することが簡単にでき、欲しい情報に最短でアクセスできるのは大きなメリットですね。後から読みたい記事をクリップしておける機能も便利です。
 また、賛否が分かれそうですが、私はプッシュ機能推奨派。通知が煩わしくて切ってしまう方も多いと思いますが、日経のアプリは注目度の高い速報が通知されるので、他の作業をしていても情報を逃さずに受け取れます。ビジネスパーソンならば知っておいた方がいい世の中の動きを常に頭に入れておくためにも、通知された記事は必ずチェックしています。
—— 医療やヘルスケア分野の中でも、特に注目しているテーマはありますか?
 子供の頃からピアノを学んでいて、ピアノで食べていくことを夢みていた時がありました。結果的にピアニストは狭き門なのでかなえられなかったんですが、何かピアノに関わる仕事はないかと探していて、高校生の頃に音楽療法に興味をもちました。大学院では心理学を研究し、修了後に臨床心理士や公認心理師の資格を取得しました。
 そのような経緯から、心と体のケアを扱う業務の中でも、メンタルヘルスの分野に注目しています。ここ2、3年でメンタルヘルス関連の企業やサービスがぐんと増えていますが、伸びていくかどうかはこれからが勝負だと思います。その点も踏まえて注視していきたいと思っています。
 近年では病気になってから治療するよりも、予防して健康的に生きる「ポジティブメンタルヘルス」や、予防しながら生き生きと働く「ワークエンゲージメント」なども注目されているので、この関連の情報を積極的にキャッチアップしていきたいと思っています。
 資格をもっていると、学会や資格団体などから専門的な情報をもらえるものの、ビジネスでは今どうなっているかという情報が少ないので、その点を日経から得られるのはありがたいですね。

新聞記事をベースにした他の人との会話で理解が深まる

—— ヘルスケアなどの分野とビジネスとを結びつけるための情報収集ツールでもあるのですね。ほかには、個人的な楽しみとして読んでいる記事はありますか?
 高校生の頃から読んでいる「春秋」は今でも必ず読みます。この間に書き手も変わっていると思うのですが、事実と主観とのバランスが絶妙で、変わらず毎朝楽しみにしています。
 例えば、ニュースなどでは人の残した功績を客観的な事実として知ることができますが、春秋ではさらにその人となりに触れることができ、「こんな人だったんだな」と興味深く読むことができます。
 この他、さまざまな分野で活躍する同世代の人の記事を見つけたら読んでいます。特に社会課題を解決するために起業して奮起している人のインタビュー記事などが掲載されていると、自分も頑張らなくてはという気になります。
—— 新聞を毎日読まない人にとって、読むことを日課にするのはハードルが高いようです。これから読みたいと思っている人が習慣化するためのおすすめの方法はありますか?
 私自身のことではないのですが、最近就職活動のために日経を読み始めた私のいとこが、新聞記事を読んだ感想を定期的に叔父に添削してもらっているそうです。
 彼も最初は読むのが難しいと感じたそうですが、「この記事の注目ポイントはなにか」「何を伝えたいと思っているのか」について、叔父との壁打ちを繰り返すことで読めるようになったと言っていました。読み続けるうちに、記事の本質を捉える力が養われ、だんだん面白くなってきているようです。
—— 1つの記事について他の人と会話を交わすのも、新聞を読み続けるモチベーションになるのですね。
 そうだと思います。読んだ後に記事について誰かと会話すると、ただ読んで終わるよりも、知識の糧にもなることが多いのではないでしょうか。
 私も会社のチーム内で、チャットを使って注目記事を共有して意見を交わすことがよくあります。同じ記事を読んでも、それぞれの人の背景や価値観によって解釈が変わることもあるので、人の言葉で改めて気づかされることも多いんです。そういう意味では、記事をベースに会話することによって、同僚などとお互いの考えを知り合うよいきっかけにもなっています。

Interviewee

NTTデータ経営研究所
ライフ・バリュー・クリエイションユニット/シニアコンサルタント、公認心理師、臨床心理士
坂井田 萌

広告代理店を経て現職。医療・ヘルスケア領域でメンタルヘルスからフィジカルヘルスまで、幅広く調査や事業化支援、マーケティング支援に携わる。社内横断組織「行動デザインチーム」にも所属し、行動科学理論などをもとに効果的に行動変容を促すサービスの企画から実証までを支援している。

役職等は2022年11月10日現在のものです