みんなの日経読みこなし

企業読者インタビューVol.3 山田コンサルティンググループ 増田 祥人様

コンサルティンググループで採用を担当されているという増田さん。日本経済新聞を読み始めたきっかけや仕事での活用方法や新聞で得る情報の重要性などを詳しく語っていただきました。また、企業の採用担当者や就活生にとっては、日経をどう有効活用できるのか、ヒントが盛りだくさんです。

日経で得た情報がメッセージの説得力を強くする。

大学院の頃から読み始めた日経は身近な存在

—— 増田さんが日経を読み始めたきっかけはなんでしょうか?
 大学院に通っていた頃、就職活動をきっかけに読み始めました。今とは少し違うかもしれませんが、2009年ごろは「就活時に新聞を読んでいるのは当然」という空気がありました。
 私が通っていた大学院は社会人7割、学部卒業生が3割で、ビジネススクールのような講義がされていました。院生の多くは実務経験がありましたが、学部を卒業したばかりの私はビジネスの現場に近いアルバイトは経験していたものの実務経験は乏しかったので、少しでも企業のビジネスケースに触れたくて日経で知識を補完していたのも読んでいた理由です。
—— 就職活動を終えてからも読み続けてきたのですか?
 大学院修了後、Eコマース(電子商取引)関連の企業に就職して以降、その後山田コンサルティンググループに転職してからも日経は毎日読んでいます。私の情報収集手段としてもはや欠かせないものになっています。
—— 読み始めた頃と現在を比べると、読み方は変わりましたか?
 当初は就職活動のために読んでいたので、興味のある業界や企業の情報を集めるのが主眼でした。また、ちょうどあの頃、北海道夕張市の財政破綻が世間で注目され、個人的にも興味をもっていたため、関連する地方自治や政治などの記事を熱心に読んでいました。今振り返ると、自分の興味や関心を中心にした読み方でしたね。
—— 現在はどうですか?
 社会人になってからは、より業務に直結した読み方に変わりました。私は今、管理本部の人事部に所属しており、主に採用業務を担っています。また、人事評価制度をはじめ、研修やその体制の構築など、人に関わる業務全般に携わっています。このため、人事に関わる業務関連の記事には必ず目を通します。例えば最近、金融会社が始めた従業員向けの福利厚生サービスや、電力会社がDX(デジタルトランスフォーメーション)系人材を2倍超にするといった記事がありましたが、企業の人材育成や福利厚生などの記事は仕事柄、まず目に飛び込んできます。また、弊社は国内の中堅、中小向けの経営コンサルタント事業を手がけており、事業承継やファンドに関する記事にも注目しています。
 紙面で言えば1面は当然として、ビジネス面は必須です。コンサルティング会社なので、お客様の業種は幅広く、その悩みも多岐にわたります。ですから、どれ一つとっても無駄な記事はなく、何かしら仕事につながります。全てを読みきれなくても、見出しや第1段落ぐらいまでは全て目を通しています。
 月曜日付の働き方を含めた女性面、今の学生の状況を知ることができる水曜日付の大学面など、曜日ごとに注目している面もあります。

発信力を高め、情報を整理するビジネスに欠かせないツール

—— コンサルティング会社の採用担当として、新聞を仕事に活用する際に意識していることはありますか?
 最近、日経の記事を読んでも感じることですが、転職市場で未経験者歓迎の求人が落ち込み、即戦力人材やシニアの活用が膨らんでいます。そんな時代だからこそ、自分がどの業界でどんなスキル能力を身につける必要があるのかに向き合うことは極めて重要です。コンサルタントを志望する求職者に、耳障りのよい情報だけでなく、厳しい現状も伝えてなくてはいけないと常々感じています。
 学生の数が減っているものの、企業の採用意欲は変わらない状況で致し方ない面はあるとはいえ、私は今の就職活動には問題が多いと感じています。他社のプレゼンテーションを聞いても表面的な情報のみで、なかには立地条件を売り文句にする企業もあります。そんなことより、業界の中でどういう位置付けで、どんな数的インパクトがあるのかというような、定量的な情報をきちんと伝えなければ、採用担当者としての責任を果たしていないと思います。採用する側と企業を選ぶ側がお互いフェアな目線に立って情報を発信し交換するためにも、有効求人倍率をはじめとする公表された定量的な情報など、客観的事実を伝えるためのツールとして日経が役立っています。
—— コンサルタントという仕事の現状を伝えるプレゼンテーションが必要なのですね。
 弊社のビジネスは国内の中堅、中小企業のお客様がメインです。事業が立ち行かなくなり、資金繰りが回らなくなった企業の元に出向き、抱える課題を抽出して再生計画を立て、その実現のためにお客様に徹底的に伴走する。そうした事業再生の仕事が当社の祖業です。
 事業再生の現場はきれいごとでは済まされません。お客様である企業が再生するためにできることを徹底的にあぶり出すことが必要ですから、収益確保のためにやむなくリストラを敢行することもあります。事業再生のステージにあるオーナー経営者は多くのステークホルダー(利害関係者)と対峙する中で孤独です。そんな厳しい状況の下で、我々は逃げずにお客様に伴走し、逆境の真のパートナーという立ち位置で戦ってきました。
 コンサルタント自身がお客様のところに出向き、求められるという点は、他にない魅力ややりがいがあります。再生を促すことは雇用を守ることであり、ひいては社会貢献にもつながります。
 半面プレッシャーはすさまじく、寝ても覚めてもお客様のことを考え、休日の自分の時間を削ってでも情報収集や勉強に当てる、自己投資の時間が必要になります。かっこよく語るのは簡単ですが、精神的、肉体的タフさが求められることも伝えるのが採用担当者の役目。コンサルタントを志望する求職者には、その点をフェアに伝えたいと考えています。
—— 求職者へのメッセージを伝える場でも新聞を役立てていますか?
 私は1年間に50回以上、合同説明会やセミナーなどで弊社について求職者に説明するプレゼンテーションのために登壇します。
 残念ながら大企業と違って、合同説明会などで看板を出すだけで学生がブースに話を聞きにきてくれるわけではありません。中にはイベント主催者に促されて半ば強制されてブースにくる学生もいます。縁あって集まった学生に何をやっている企業なのかを能動的に伝えると、最初は興味がなさそうでも、20分後には表情を変える瞬間があります。会社を代表して、弊社の立ち位置や社会に存在する意義、さらに少し先を歩く社会人として、学生に本質を伝えるのが人事の仕事の醍醐味だと感じています。
 そのメッセージをいかに興味深く聞いてもらい、求職者にとって説得力のあるものにするか。導入部に「先週こんなことが起こりましたよね」というように、記事で目にした情報を盛り込むことで、学生を引き込むことができます。「大企業の人員削減」「未経験者採用の減少傾向」といったシビアな情報も取り入れることで、聞いている人たちの真剣さが高まっていくのがわかります。直近の日経で得た“今、世の中で起きていること”がメッセージの説得力を強くしてくれます。
—— 増田さんの仕事の中で、日経で得た情報が随所に生きているんですね。
 近年は新聞だけでなく、テレビやネットなどを通じてさまざまな情報がタイムリーに入ってきます。各媒体ではコメンテーターや専門家などがさまざまなコメントをしますが、それに流されすぎると危険だなと感じることもあります。また、ネットはいち早く情報が流れてきますが、うのみにするのは危ういものも多々あります。事実をベースに書かれている日経を読めば「やっぱり事実はこうだったんだよね」「前日に流れていたけれど、事実はこういうことだったんだ」とわかるので、事実を整理するツールとして、私にとってなくてはならない存在です。

職場で情報を共有するため、朝礼での新聞読み聞かせを日課に

—— 毎日、丹念に新聞を読み込んでいるようですが、増田さんは読む時間をどのようにつくっているのですか?
 最近、電車の中で新聞を読む人は少なくなりましたが、私はもっぱら紙の新聞派。スマートフォンでラジオが聴ける「radiko(ラジコ)」で流し聴きをしながら、新聞を読むのが日課になっています。新聞を読むために必ず各駅停車に乗って、通勤電車の中の20〜30分を情報取集の場にすると決めています。
 まず一読し、気になる記事をざっと読みます。その際、朝礼でメンバーと共有する記事を選びます。用語の理解が不確実なもの、後から読み返したいものは紙面の端を折るなどして目印にし、出社後に確認することもあります。
—— 朝礼の時間に同僚と新聞記事を共有しているのですね。
 コロナ禍で在宅勤務が増えてメンバーが顔を合わせる機会が減ったのを機に、3年前から始めた取り組みです。ビデオ会議システム「Zoom(ズーム)」のウェブミーティングの機能を使い、2、3の記事を取り上げて口頭で読み聞かせをします。価値観を押し付けるわけではありませんが、この記事はこうした視点で捉えるべきなのではないかなどと私自身の考えも付け加えています。
—— 朝礼で新聞の読み聞かせをする狙いは?3年間続けて、チームのメンバーに変化はありますか?
 勧めても新聞を読まないメンバーが多いので、無理やりにでも読む機会をつくろうと考えました(笑)。
 採用チームのメンバーからはエージェントとの会話の際、共有した記事に関連することが話題になったというような話を聞くことがあります。また、チームの中には朝礼での読み聞かせをきっかけに、週に1度有志で気になった記事の読み合わせをするメンバーもいます。新聞から得た情報がチームのメンバーのビジネスや会話の幅を広げており、これからも継続してメンバーそれぞれの血肉になったらと思っています。

Interviewee

山田コンサルティンググループ
管理本部 人事部 シニアマネージャー
増田 祥人

明治大学専門職大学院グローバルビジネス研究科修了(経営管理修士、MBA)。2010年4月楽天入社、2010年10月山田コンサルティンググループ入社。事業再生を中心に、流通・小売、製造業などのクライアントのコンサルティングを担当。その後、管理本部人事部に異動、現在に至るまで採用業務を中心に人事業務全般を担当。

役職等は2022年11月10日現在のものです