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「駅ナカ」から「駅ソト」まで~鉄道会社の小売り・サービス事業について知る!

2012.10.1 掲載
本業の運輸収入が伸び悩む中、鉄道各社は「駅ナカ(えきなか)」に代表される小売り・サービス事業に力を入れています。最近では東日本旅客鉄道(JR東日本)系のルミネが駅とは直結していない銀座・有楽町に出店するなど、そのビジネスは「駅ソト」にまで拡大しはじめました。このほどリニューアルオープンした東京駅でも新たな駅ナカ施設が誕生しており、あらためて駅構内・界隈での鉄道会社の“副業”が注目を集めています。今回は、鉄道各社が小売りやサービスに注力する背景、鉄道各社の最新動向などについて解説します。

2005年頃から「駅ナカ」ビジネスが本格化

2005年頃から「駅ナカ」ビジネスが本格化
 近年、鉄道会社が手掛ける、駅の構内・周辺での新ビジネスが拡大しています。特に各社が力を入れているのが「駅ナカ」の活用です。駅ナカとは、文字通り鉄道会社が駅の中で展開する商業スペースの通称です。1990年代頃から鉄道会社が各種店舗の誘致に力を入れはじめ、2005年以降、東日本旅客鉄道(JR東日本)が多店舗を集積した「エキュート」を、東京地下鉄(東京メトロ)が同様に「エチカ」を駅内に次々と開業してから特に注目を集めるようになりました。
 従来の駅構内のお店といえば、小規模な駅売店やジューススタンド、立ち食いそば店がある程度でしたが、最近の駅ナカには理髪店、マッサージ店、総菜店、高級スーパー、衣料品店、レストランなどさまざまな業種・業態が出店しています。駅ナカが登場する以前も、鉄道会社は駅の建物を大規模化して、百貨店や各種店舗を入れた「駅ビル」事業を展開していました。ただ、駅ビルが原則的に駅の改札の外に展開する商業スペースであるのに対し、駅ナカ施設の多くは改札内に設けられている点が異なります。
 利用者にとって駅ナカは、改札を出ることなく通勤・通学途中に立ち寄れるため利便性が高く、人気を集めています。また、多くの客が行き交う駅改札内の販売効率は、通常の小売りの立地に比べて格段に優位です。売り場1平方メートル当たりの年間商品販売額で見ると、駅ナカの多くの業種が小売業の平均を大きく上回っています。入店する専門店などのテナントにとっても駅ナカへの出店は魅力的です。
2012年10月1日掲載