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世界の穀物取引の主役「穀物メジャー」について知る!

2012.9.3 掲載
世界の穀物取引において極めて大きな影響力を持つ「穀物メジャー」。世界的な食糧需要の拡大に対応して穀物供給網をさらに拡充し、ますますその力を強めようとしています。また最近では丸紅が米国3位の穀物取引業者ガビロンを買収するなど、日本の商社も世界の食糧市場で存在感を高めています。今回は、穀物メジャーとはどんな企業か、世界の食糧供給における役割、日本の商社との関係、業界動向などについて解説します。

世界の穀物流通に不可欠な存在

世界の穀物流通に不可欠な存在
 小麦や大豆、トウモロコシなどの主要穀物の買い付けから集荷、輸送、保管までを手がける専門の大手商社を「穀物メジャー」といいます。米国や欧州に本社を置く上位5社程度で世界の穀物取引の約8割を占めると見られ、世界の穀物流通に大きな影響力を持っています。経営規模は上位2社が群を抜き、首位の米カーギルが自社で調達する穀物は年約7500万トン、2位の米アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド(ADM)は約6500万トンと推定されます。
 「メジャー」と名の付く世界的な大企業としては石油の採掘から輸送、精製、販売までを手がける「石油メジャー(国際石油資本)」がよく知られますが、自ら油田開発などの生産活動を担う石油メジャーと違い、穀物メジャーは基本的に穀物をつくりません。農家から穀物を買い入れ、これを需要家に売却することで得る流通マージンを収入源としています。
 穀物メジャーの力の源泉は、穀物流通の根幹を握っていることにあります。「エレベーター」や「サイロ」と呼ばれる穀物の貯蔵施設、はしけ(大型船と陸との間を往復して貨物を運ぶ舟)、貨車、貨物船など穀物の集荷・保管・積み出しに必要な設備・運搬機器を多数保有しており、世界最大の穀物生産地である北米各地に集荷網を張り巡らし、穀物供給の上流から下流までをしっかりと押さえているのです。
 情報収集力が高いのも穀物メジャーの強みの一つです。穀物相場は生産地の天候や収穫状況に大きく左右されます。農家と直接取引をしている穀物メジャーにはいち早く生産動向の情報が入ってきます。人工衛星などを駆使して世界中の生産地の天候状況もチェックしており、価格変動の大きい穀物市場において情報面での優位性を保っています。
 穀物メジャーの最大の経営リスクは穀物相場の変動ですが、これに対しては先物取引(将来の一定時期における商品の受け渡しとその価格をあらかじめ契約しておく取引)を活用することで対応しています。農家から現物の穀物を買うと同時に先物取引をしておけば、たとえ穀物価格が下落しても反対売買することで価格変動による損失を抑えられます。
 穀物メジャーは世界の穀物流通において、いくつかの重要な役割を担っています。その一つは、生産者から小口の穀物を買い集め、これを一定の品質基準に基づき、貨車1両やはしけ1そうなどの大口の数量単位にまとめあげる役割です。必要な質・量の穀物を需要家自らが個別農家から調達するのは大変ですが、穀物メジャーを通すことで簡単に入手できます。また、年間を通じて安価な穀物が国際市場に大量に供給されているのも、大量輸送により輸送コストを抑えたり、収穫期の異なる穀倉地帯をネットワークしている穀物メジャーがあってこそといえます。
2012年9月3日掲載