日本の商社も世界的な食糧需要の増大を商機と捉え、南米の農業法人と提携したり、農業事業に参入するなど穀物供給網の構築を活発化させています。
なかでも積極的に取り組んでいるのが穀物事業を主力とする丸紅です。2012年5月、丸紅は米穀物大手ガビロンの買収を発表しました。丸紅はこれまで中国の現地企業と提携して飼料工場を共同整備するなど、アジアを中心に穀物の販売力を強化してきました。しかし世界の穀物農家から直接調達する数量は700万~800万トンにとどまり自己調達力の確保が課題でした。
ガビロンは3800万トンの自己調達能力を持ち、うち3000万トンを米国で販売し、カーギルなどの穀物メジャーの調達を影で支えています。買収により丸紅の穀物貿易量は3300万トンと世界シェアが1割強になり、首位のカーギルに次ぐ規模に一気に躍り出ます。丸紅はガビロン買収後も穀物メジャーの調達を裏方として支えつつ、米国での集荷網をさらに拡充して調達能力を増強。中国、アフリカ、中東など向けの穀物販売量の拡大につなげる計画です。
世界的な食糧需要の増加は、各国の穀物企業による国際的な食糧争奪戦を導いています。日本の商社が穀物供給網の拡充に力を入れているのは、穀物の取扱量をできるかぎり増やして各国企業に買い負けるリスクを抑えるためでもあります。食糧輸入国である日本が今後も安定して食糧を調達できるかどうか――欧米穀物メジャーはもとより「和製穀物メジャー」の動向から目が離せません。