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業界、M&A、新製品…ビールの最新事情を知る!

2012.8.6 掲載
少子高齢化の影響で国内市場が縮小する中、ビール各社は海外事業の拡大を目指しており、現地企業のM&A(合併・買収)が活発化しています。一方、国内では泡を凍らせたビールやアルコール分を全く含まない「ノンアルコールビール」を投入するなど、新機軸を打ち出し、需要喚起に躍起になっています。今回は、ビールの基礎知識、「第3のビール」などのビール系飲料の普及の経緯、ノンアルコールビール市場が急拡大している背景、最新の業界動向などについて解説します。

国内では低価格の「第3のビール」が主流に

国内では低価格の「第3のビール」が主流に
 酒税法により、日本における「ビール」は麦芽の使用率が3分の2以上でなければならないと定められており、麦芽の使用率がこれより低い場合には「発泡酒」に分類されます。
 日本では長い間、お酒を販売できるのは酒屋などに限られていましたが、1989年以降に規制緩和が進み、大型ディスカウントストアなどでもビールが販売できるようになりました。これにより値引き競争が激化し、ビールメーカーに対する価格の引き下げ圧力が強まりました。そこで94年からビールメーカーが市場に投入し始めたのが、ビールより税率が低く、低価格が実現可能な発泡酒でした。安価ながらビールと遜色のない味が楽しめるとあって、発泡酒は消費者の支持を得て瞬く間に市場を拡大していきました。
 消費者のビール離れによる税収の落ち込みを懸念した政府は、2003年に酒税法を改正して発泡酒の税率を引き上げました。これを契機に登場したのが発泡酒よりもさらに低価格の「第3のビール」です。税率改正で低価格という発泡酒の利点が薄れたことから、ビールメーカーが新たに投入したビール風アルコール飲料の総称です。「新ジャンル」とも呼ばれます。主な原料に麦芽以外を用いて、ビールや発泡酒よりも税率の低い「その他の醸造酒(発泡性)」や「リキュール(発泡性)」に分類されることにより低価格を実現しています。不況下で節約志向が強まる中で各社はこの分野に力を入れており、08年には出荷量で発泡酒を初めて抜きました。
2012年8月6日掲載