ビジュアル・ニュース解説

「企業年金」ってなあに?

2012.6.4 掲載
2012年2月、企業年金運用会社のAIJ投資顧問が年金運用で多額の損失を出していたことが明らかになり、極めて大きな問題となりました。AIJに資金運用を委ねていたのは積み立て不足に苦しむ厚生年金基金が多く、その窮状があらためて浮き彫りになった格好です。政府・与党内では企業年金のあり方を見直す議論が本格化しています。今回は企業年金とは何か、その種類と仕組み、制度の経緯、課題などについて解説します。

バブル崩壊後、財政悪化で厚生年金基金が急減

バブル崩壊後、財政悪化で厚生年金基金が急減
 厚年基金は、本来は国が担うはずの公的年金(厚生年金)の運用・給付業務の一部を、企業が代行する仕組みになっています。企業は基金を設立すると、厚生年金の保険料の一部(代行部分)を国に納付することが免除され、その分を自社の積み立て分と合わせて運用します。運用資金の規模が大きくなるわけですから、その分、運用益を拡大する余地が広がり、退職者への給付を増やしやすくなります。しかも税制面での優遇もあり、運用環境に恵まれていた高度経済成長期には基金の数はうなぎ登りで増えていきました。
 しかしバブル崩壊により状況は一変します。経済環境の悪化により資金の運用が低迷、多くの厚年基金が年金原資の積み立て不足に陥ってしまったのです。そのままでは負担に耐えきれずに企業の経営までが傾く恐れがありました。これを受けて、政府は企業の負担を軽減するため、代行部分を国に返上しやすくする企業年金制度の改革に踏みきります。2002年には「確定給付企業年金法」が施行され、これにより厚年基金が代行部分を国に返して確定給付企業年金に移行することが可能となりました。2000年には企業会計基準が見直され、年金の積み立て不足を決算書に反映させなければならなくなったこともあり、2002年以降、代行部分を返上し、確定給付企業年金に移行する例が相次ぎました。
2012年6月4日掲載