いずれの場合も、企業は年金の掛け金を基金などの形で積み立てています。そしてその運用は、投資顧問会社(顧客から預かった資金を自らの裁量で運用する資産運用の専門会社)などに委託します(確定拠出年金の場合は従業員自身が運用方針を決定)。確定給付企業年金と厚年基金は、将来受けとる年金額が加入期間などに応じてあらかじめ決まっているため、もし運用成績が予定よりも悪かった場合は、足りない分を企業が補わなければなりません。
企業年金は、もともとは企業が従業員に退職金を分割して支払うことから始まりました。退職金制度が企業に本格的に導入されるようになったのは、戦後の高度経済成長期のことです。当時は物価も上昇していたため、給料の引き上げを求める従業員の声が高まりました。しかし、戦後の企業は慢性的な資金不足に陥っており、稼いだお金も工場の建設資金や機械の購入資金にあてるのが精一杯で、給料の値上げに対応できる余裕がありませんでした。そこで企業は、給料を値上げしない代わりに退職金を支払うことを従業員に約束するようになりました。
ただ、退職金は一度にまとめて支払わねばならず、企業にとって資金負担が大きいことに変わりはありません。やがて企業は退職金を分割して、利息分を上乗せして支払うようになりました。政府もこの仕組みを制度として整備し、1966年に厚年基金が発足、現在につながる企業年金制度がスタートしました。