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「スーパーコンピューター(スパコン)」って何がすごいの?

2012.5.21 掲載
気象予測から天体運動の解析といった科学研究はもちろん、自動車や各種ハイテク製品の設計、新薬の開発など幅広い産業分野で活用されているスーパーコンピューター(スパコン)。2011年には官民で共同開発された「京(けい)」が性能ランキングで世界首位に認定されるなど、日本のスパコン研究開発は世界の最先端を走っています。一方で、米国や中国といったライバル国とのスパコン開発競争、メーカー間の受注競争もますます熱を帯びています。今回はスパコンの仕組み、必要とされる理由、スパコンをめぐる各国の開発動向などについて解説します。

大規模な科学技術計算に用いられる超高性能コンピューター

大規模な科学技術計算に用いられる超高性能コンピューター
 「スーパーコンピューター」とは、通常のコンピューターでは解くことが難しい大規模で高度な科学技術計算をきわめて速いスピードで行えるコンピューターの総称です。略して「スパコン」と呼ばれ、主に大企業や研究機関などで使われています。
 地震や津波はいつどのように発生しどのような被害を引き起こすのか? タンパク質の分子は生体内でどのような働きをしているか? 宇宙はどのように誕生し、どんな構造を持つのか?──私たちが暮らす世界には、対象が極めて巨大であったり複雑すぎたりして、簡単には解明できない事象が数多くあります。しかし、物理法則などを基に膨大な計算を積み重ねるシミュレーションを活用すれば、これらを解き明かすことができるかもしれません。
 また、自動車や家電、IT(情報技術)機器などは製品性能や技術の進歩・向上が絶えず求められています。例えば自動車の安全性確保のためには衝突実験などが有効ですが、実際には危険で費用もかかるためそう何度もできるわけではありません。しかし、コンピュータを使った計算上の仮想実験であれば、自動車が衝突したときの壊れ具合や乗っている人への衝撃度合いなどを、安全かつ安い費用で何度も検証することができます。
 こうしたシミュレーションには高速で膨大な計算ができるコンピューターが必要であり、そのために開発されているのがスパコンです。基礎科学の研究手段としてはもちろん、自動車や各種ハイテク製品の設計、新薬の開発、新材料・新物質の創成といった幅広い産業分野でも活用され、いまや人類の進歩に欠かせない道具となっています。
2012年5月21日掲載