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少子化が加速、政府は歯止めへ「異次元の対策」

2023.3.6 掲載
日本の出生数が急減しており、少子化が加速しています。少子化は人口減少につながり、社会保障や労働、地域社会の担い手不足による国力低下を招きます。これまでも対策が取られてきましたが、少子化に歯止めはかかっていません。この状況に対して国は危機感を強めており、岸田文雄首相は2023年1月、「異次元の少子化対策を実現する」との方針を表明しました。今回は進む少子化とその要因や対策について解説します。

3.働き手が減れば年金や介護、医療などの負担増が避けられず

3.働き手が減れば年金や介護、医療などの負担増が避けられず
 少子化が続けば人口の減少につながります。総務省がまとめた21年10月時点の人口推計によると、外国人を含む総人口は20年10月と比べて64万4000人少ない1億2550万2000人で11年連続減少しました。減少率は0.51%で、統計を取り始めた1950年以降で最大でした。労働の担い手となる15~64歳の生産年齢人口は58万4000人減の7450万4000人で、総人口に占める割合は過去最低の59.4%でした。近年は高齢者や女性が働きやすい環境をつくることによる働き手の増加で労働力不足を補ってきましたが、それも足元では伸び悩んでおり限界に近づきつつあります。
 パーソル総合研究所と中央大学がまとめた「労働市場の未来推計」によると、人手不足は30年に644万人に上ると推計しています。新型コロナウイルス禍前の19年上半期の人手不足が約138万人だったので、10年余りで4.6倍に増えることになります。働き手が減れば潜在成長率を押し下げるため、成長を続けるには生産性を引き上げ、少ない労働力でより多くの付加価値を生み出す必要があります。年金や介護、医療などの社会保障制度は保険料などの負担増が避けられなくなります。
 政府は進む少子化に危機感を強めています。政府の全世代型社会保障構築会議が22年12月にまとめた報告書は子ども予算の倍増を明記。出産育児一時金の大幅増額や児童手当の拡充などを求めました。23年1月からは、子育ての不安を解消するとともに、ベビー用品の購入費などの経済的負担を軽減する「出産・子育て応援交付金」の支給が始まりました。新生児1人当たり10万円相当のクーポン券などを準備が整った自治体から順次支給します。
 岸田文雄首相は23年の年頭記者会見で「異次元の少子化対策に挑戦する」と表明。少子化対策の拡充を検討する関係府庁会議を新設しました。首相は①児童手当を中心とする経済的支援の強化②すべての子育て家庭を対象としたサービスの充実③育児休業の拡大を含む仕事と育児の両立支援――の具体策を検討するよう指示しており、23年3月末までに政策のたたき台をつくります。子ども政策の司令塔になるこども家庭庁ができる23年4月以降に具体策を詰め、23年6月に決める経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)に子ども予算倍増に向けた大枠を示す方針です。
2023年3月6日掲載