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国の安全保障に関する防衛3文書改定、反撃能力保有へ転換

2023.2.20 掲載
政府は2022年12月、防衛費の大幅な増額や反撃能力の保有などを盛り込んだ新たな防衛3文書を決定。防衛費を国内総生産(GDP)比で2%に増やします。その財源は歳出改革などで捻出したうえで、なお不足する分は法人、所得、たばこの3税で確保する方針です。今回は大きく転換した安全保障政策の狙いやその背景などについて解説します。

1.防衛費、5年で現行の1.5倍の総額43兆円に

1.防衛費、5年で現行の1.5倍の総額43兆円に
 防衛3文書とは国の安全保障政策に関する「国家安全保障戦略」「国家防衛戦略」「防衛力整備計画」の3文書です。国家安全保障戦略は外交・防衛の基本方針を定めており、国家防衛戦略はこの戦略を踏まえた防衛力の水準を規定します。防衛力整備計画は5年間の防衛費の総額や主要装備の数量を定めるものです。国家安全保障戦略は2013年の策定後初めて改定され、国家防衛戦略はこれまでの「防衛計画の大綱(防衛大綱)」から、防衛力整備計画は「中期防衛力整備計画(中期防)」からそれぞれ移行しました。
 新たな安保戦略は日本の安全保障環境について、ミサイル発射を繰り返す北朝鮮や中国などの軍事的な脅威にさらされており「戦後最も厳しい」と位置づけました。これを踏まえ、これまで「敵基地への攻撃手段を保持しない」としてきた政府方針を転換し、相手のミサイル発射拠点をたたく「反撃能力」の保有を打ち出しました。防衛費は公共インフラや科学技術研究費など国防に資する予算を含めて国内総生産(GDP)比で2%に近づけます。防衛費は1976年に当時の三木武夫政権が国民総生産(GNP)比1%の上限を設けて以降、ほとんど1%を超えていませんでした。国際秩序を乱す動きに同盟国と一丸で対処する「統合抑止」を掲げる米国との同盟の強化で対処力も高めます。
 国家防衛戦略では相手の射程圏外から攻撃できる「スタンド・オフ防衛能力」を強化するとともに、迎撃だけでなく米軍と協力して反撃もできる「統合防空ミサイル防衛(IAМD)」に移行し、「必要最小限限度の自衛措置」として反撃能力を行使することを定めました。防衛力整備計画では国産ミサイルの射程を伸ばすほか、米国製巡航ミサイル「トマホーク」の導入を盛り込みました。有事に戦いを続ける「継戦能力」も重視し、防衛装備品の部品や弾薬などの調達費を現行予算の2倍にします。防衛費は23~27年度の5年間の総額で現行計画の1.5倍の43兆円に増やします。
2023年2月20日掲載