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日本酒の国内需要減、高級化や輸出拡大に活路

2023.2.6 掲載
冬場は新米で仕込んだ日本酒の新酒が出回る時期です。日本酒は身近なお酒として愛されてきましたが、国内で需要減少が続く一方、海外への輸出は伸びています。今回は日本酒の製法や市場の現状などについて解説します。

2.国内出荷量はピーク時の2割近くまで落ち込む

2.国内出荷量はピーク時の2割近くまで落ち込む
 国内の日本酒の出荷量は1973年度の176万6000キロリットルをピークに減少傾向が続いています。2000年代に入って出荷の減少が加速し、21年度は39万9000キロリットルとピーク時の2割近くまで落ち込みました。人口減少や酒の多様化に伴う日本酒離れに加え、足元では新型コロナウイルス禍による飲食店の営業自粛などが打撃となっています。ただ、減少が続いているのは普通酒がほとんどで、純米酒や純米吟醸酒は増加基調に転じており、20年度(酒造年度、20年7月~21年6月)は10年度と比べて2割増えています。全体の出荷金額も11年を底に反転して増加基調で、単価の高い酒が伸びています。
 一方、日本食ブームなどを背景に、日本酒の海外への輸出は大きく伸びています。財務省の貿易統計によると、21年の輸出額は402億円で前年の1.7倍に増加し12年連続で過去最高を更新しました。特に中国への輸出の伸びは著しく、21年の輸出額は前年比77%増の102億円と国別で初めて首位に立ちました。中国に次いで輸出額が多いのは米国、香港の順でした。
 中国向け輸出はこの10年で約50倍に急拡大しており、日本酒メーカーはさらに増やす計画です。白鶴酒造(神戸市)は25年度をめどに現地向け販売数量を22年度計画の2倍に増やすほか、オエノンホールディングスも23年度の輸出量を21年度の4倍にします。中国以外では「獺祭」ブランドで有名な旭酒造(山口県岩国市)が日本酒の「世界観」を知ってもらおうと、米ニューヨーク州のハイドパーク市で酒蔵の建設を進めています。米国産の酒米も原料にした純米吟醸酒の新商品を製造・販売するほか、立ち飲みスタイルの試飲スペースも設けます。
2023年2月6日掲載