23年10月からインボイス制度が導入されると、事業者が仕入れ時に払った消費税を差し引けるのはインボイスを発行する事業者との取引だけになります。インボイスがない免税事業者との取引は仕入れ時の消費税を含む消費税の全額を納めなければなりません。免税事業者がインボイスを発行するには事前に税務署に申請し、インボイスに記載する事業者ごとの登録番号の交付を受けて課税事業者になる必要があります。制度開始に間に合うように課税事業者になるには同年3月までに申請しなければなりません。しかし、消費税の課税事業者のうち、登録を済ませたのは22年9月末時点で38%にとどまっています。日本商工会議所が同年5~6月に実施した調査によると、会員企業の42%はインボイス導入に向けて「特に何もしていない」と回答しており、中小企業の対応の遅れが目立っています。
仕入れ先が免税事業者でインボイスを発行できない場合、事業者は支払った消費税の仕入れ税額控除ができず負担が増えます。仕入れ価格が同じなら課税事業者と取引をした方が有利になるため、立場の弱いフリーランスなどの免税事業者から取引の打ち切りや価格の引き下げにつながるのではないかと懸念する声が上がっています。課税業者になっても消費税分を販売価格に転嫁できず利益が減る恐れがあるうえ、事務負担も重くなります。
このため、自民・公明両党が22年12月にまとめた2023年度与党税制改正大綱では小規模事業者の負担を軽減する経過措置を導入。免税事業者が課税事業者になる場合、納税額を売り上げ時に受け取る消費税の2割に抑える特例を3年間設けるほか、6年間の特例で売上高が1億円以下の事業者が1万円未満の商品を買う際にはインボイスがなくても仕入れ税額控除を受けられるようにします。