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衆院の小選挙区「10増10減」、1票の格差是正

2022.12.5 掲載
衆院小選挙区の数を5都県で計10増やし、10県で計10減らす「10増10減」を反映した改正公職選挙法が2022年11月に成立しました。議員1人あたりの有権者数の格差を示す「1票の格差」を2倍未満に是正します。今回は衆院選の1票の格差の現状やそれを是正する改正公職選挙法の概要などについて解説します。

2.全選挙区の半分近い25都道府県の140選挙区の区割りを変更

2.全選挙区の半分近い25都道府県の140選挙区の区割りを変更
 今回成立した改正公職選挙法では、20年の国勢調査の人口に基づきアダムズ方式で1票の格差が2倍未満になるように区割りを改定しました。小選挙区の数を東京都で5、神奈川県で2、埼玉、千葉、愛知の各県でそれぞれ1増やすとともに、宮城、福島、新潟、滋賀、和歌山、岡山、広島、山口、愛媛、長崎の10県は1ずつ減らす「10増10減」をします。北海道、茨城、栃木、群馬、静岡、岐阜、大阪、兵庫、島根、福岡の10道府県では小選挙区の数は変わらないものの、区割りを変えます。区割りの変更は25都道府県の140選挙区に及び、全289選挙区のほぼ半分が対象となる過去最多の改定になります。比例代表も東京ブロックを2議席、南関東ブロックを1議席それぞれ増やす一方、東北、北陸信越、中国の各ブロックを各1議席減らします。これにより、1票の格差は現在の区割りの最大2.096倍から同1.999倍に縮小します。改正公職選挙法は公布後1カ月の周知期間を経て22年12月28日に施行する見通しで、次の衆院選から新たな区割りが適用されそうです。
 地域によって小選挙区が増えたり、統合されたりすることで、各政党は候補者の調整を迫られます。自民党は小選挙区数が減る10県の選出議員が多く、そのうち滋賀、岡山、山口、愛媛の各県は21年の衆院選で自民党か自民党系の無所属が小選挙区の議席を独占しました。4県の選挙区では現職が引退しない限り出馬できない現職が出ます。自民党と連立政権を組む公明党は東京、埼玉、千葉、愛知の1都3県の計4選挙区で新たに公認候補の擁立を模索しています。自民党は新設の小選挙区すべてで候補者を立てることを基本方針としており、自公間の調整が必要になります。大都市部には非自民勢力の得票率が比較的高い地域があり、立憲民主党など野党も新しくできる小選挙区に候補者を擁立する構えです。
2022年12月5日掲載