ビジュアル・ニュース解説

衆院の小選挙区「10増10減」、1票の格差是正

2022.12.5 掲載
衆院小選挙区の数を5都県で計10増やし、10県で計10減らす「10増10減」を反映した改正公職選挙法が2022年11月に成立しました。議員1人あたりの有権者数の格差を示す「1票の格差」を2倍未満に是正します。今回は衆院選の1票の格差の現状やそれを是正する改正公職選挙法の概要などについて解説します。

1.裁判所が格差を許容する目安は2倍未満

1.裁判所が格差を許容する目安は2倍未満
 憲法14条は「すべて国民は、法の下に平等」と定めており、最高裁はこれが選挙における投票価値の平等も求めているとの解釈を示しています。地方の人口が減り、都市部の人口が増えているため衆院選の1票の格差は広がっており、小選挙区制が導入された1996年以降は首都圏の転入超過が続き、1票の格差は2倍を超えていました。1票の格差は国政選挙のたびに司法の場で是非が問われており、裁判所が格差を許容する目安は2倍未満とされます。最大格差が2.13~2.43倍となった2009、12、14年の衆院選について、最高裁は違憲の一歩手前とする「違憲状態」と判断しました。
 対応を迫られた国会は16年に、都道府県の人口比を反映しやすい議席配分方法「アダムズ方式」の導入を決めました。これまでは各都道府県にまず定数1を割り当て、残りの定数を国勢調査に基づく人口によって比例配分していました。アダムズ方式は各都道府県の人口をある数「X」で割り、出た値の小数点以下を切り上げて定数にします。Xは定数の合計が小選挙区の総数と等しくなるよう調整します。経過措置として、小選挙区の定数を「0増6減」した枠組みで行った17年の衆院選の1票の格差は最大1.98倍と2倍を下回り、2倍を超える選挙区もなくなりました。しかし、アダムズ方式を導入する前に行われた21年の衆院選では1票の格差が最大2.08倍に再び拡大。2倍以上は全選挙区の1割の29選挙区に上りました。この1票の格差を巡って全国の高裁・高裁支部で争われた訴訟の判決は、違憲状態が7件、合憲が9件と、国会の格差是正の取り組みに対する評価によって判断が分かれました。最高裁は22年内に統一判断を示す見通しです。
2022年12月5日掲載