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英の国王交代、王室の果たす役割は?

2022.11.7 掲載
70年余りの長きにわたり在位した英国のエリザベス女王が2022年9月に亡くなり、チャールズ新国王が即位しました。第2次世界大戦後の世界と英国の歴史を見守ったエリザベス女王の国葬には天皇陛下やバイデン米大統領、中国の国家副主席ら500人の元首・首脳級が国の政治的立場を超えて参列しました。今回は日本の皇室ともゆかりが深い英国王室はどのような存在で、その果たす役割はどんなことなのかなどについて解説します。

3.国民の理解へSNSを通じて公務やメッセージを発信

3.国民の理解へSNSを通じて公務やメッセージを発信
 チャールズ皇太子と離婚したダイアナ元妃が1997年に事故死した時、エリザベス女王はすぐに弔意を示さず、対応が冷淡だと世論の批判を浴びました。これをきっかけに女王は国民に身近で開かれた王室と、その近代化を目指す改革に取り組みました。国民との交流を活性化させ、バッキンガム宮殿の一部を一般の見学用に開放。直系男子を優先する王位継承も男女平等にしました。SNS(交流サイト)のツイッターやインスタグラムを通じて公務の様子やメッセージも発信し、若年層を含む国民の王室への理解獲得に努めています。
 女王は旧植民地を中心に56カ国が加盟する英連邦の長として、加盟国との関係構築に努め「英連邦の母」と呼ばれました。英国の国力低下にともなって連邦の結束は揺らいでいましたが、存在感の大きかったエリザベス女王からチャールズ国王へ連邦トップが交代することでこの傾向に拍車がかかる恐れがあります。既に英連邦の一員であるカリブ海の島しょ国アンティグア・バーブーダのガストン・ブラウン首相が女王の死去後、君主制の是非を問う国民投票を行う考えを示しました。近隣のバルバドスは21年11月に英連邦に加わったまま、君主制から共和制に移行しています。
 英国はイングランドがかつて別の国や地域だったスコットランド、ウェールズ、北アイルランドを統合・再編してできた連合王国です。女王は4地域の歴史的な成り立ちを重んじ、統合に心を砕いてきました。スコットランドの住民は18世紀のイングランドとの合併以来、ロンドンによる支配に反発しており、今も4割を超す市民が英国からの独立を望んでいます。英領北アイルランドでも英国からの分離、隣国アイルランドとの統合が取り沙汰されています。連合王国の団結維持という難しい役割をチャールズ国王の新王室が引き継ぐことになります。
2022年11月7日掲載