ビジュアル・ニュース解説

人材が成長の源泉、広がる人的資本投資

2022.10.17 掲載
企業が抱える人材を「人的資本」と捉え、その価値を引き出すことで生産性の向上やイノベーション(技術革新)の創出につなげようとする動きが広がっています。企業価値の源泉が人材が持つ知識やノウハウなどのソフトに移りつつあるためです。企業の人的資本への投資家の関心も高まっており、政府は早ければ2023年3月から上場企業など約4000社に人的資本情報の開示を義務付け、企業の競争力底上げを後押しする方針です。今回は人的資本蓄積の方法や背景、情報開示の内容などについて解説します。

3.人的資本投資の倍増めざし政府が5年で1兆円

3.人的資本投資の倍増めざし政府が5年で1兆円
 人的資本の情報開示は既に広がり始めています。ディスクロージャー&IR総合研究所によると、財務情報と環境、人的資本などの非財務情報をまとめた統合報告書を21年に発行した718社のうち、53%の382社が女性の管理職の登用目標を公表。会社の経営方針や職場への満足度を示す「従業員エンゲージメント」は17%の120社、研修体系は34%の246社がそれぞれ開示しました。
 岸田文雄首相はこの動きを支援するため、看板政策の「新しい資本主義」で人への投資に5年間で1兆円を充てる方針で、デジタル人材の育成を進め、企業の人的資本投資を早期に倍増させることを目指します。22年8月にはキリンホールディングスやSОМPОホールディングス、日立製作所、ソニーグループなどの企業が、社員のリスキリングで連携する協議会を設立しました。経産省と金融庁が支援し、社員が兼業や副業で相互に乗り入れする仕組みを設けたり、共同で学び直しの場を提供したりすることを検討し、人への投資拡大につなげることを目指します。
2022年10月17日掲載