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再生エネの主力に期待の洋上風力発電、事業化に向けて始動

2022.9.19 掲載
海に囲まれた日本で、再生可能エネルギーの将来の主力と期待される洋上風力発電の事業化に向けた動きが広がっています。洋上風力発電は昼夜を問わず稼働でき、海上は陸上より風が強いため発電量を増やせます。政府は2019年に「再エネ海域利用法」を施行し、普及に向けて環境を整備。30年までに原子力発電所10基分の導入を目指しています。今回は洋上風力発電の仕組みや開発の現状などについて解説します。

1.陸上より安定して発電でき夜間も稼働

1.陸上より安定して発電でき夜間も稼働
 洋上風力発電は海上に設置した風車を風の力で回し、回転運動のエネルギーを発電機で電気に変換します。発電時に二酸化炭素(CO₂)などの温暖化ガスを排出しない再生可能エネルギーによる発電のひとつです。陸上に風車を設置する風力発電と比べて海上は強い風が安定して吹くうえ、周辺への騒音の影響がほとんどないため用地の制約がなく、大型の風車を多数並べて大規模な発電所が造れます。太陽光発電と異なり夜間も発電できます。
 洋上風力発電は風車の羽根の部分である「ブレード」、発電機などを収納する駆動部分の「ナセル」、風車やナセルを支える「タワー」、タワーの土台の「基礎」の4部位などで構成され、出力制御など数万点に及ぶ部品が必要です。本体の建設のほか、洋上風車専門の建設船や海底ケーブルなど関連する業種は多岐にわたり、1基あたりの開発費は数百億~数千億円に上ります。
 洋上風力発電には風車の基礎を海底に固定する「着床式」と、海に浮かべた構造物に風車を設置する「浮体式」に大別できます。着床式は水深が50メートルより浅い海域への設置、浮体式はそれより深い海域に適しているとされます。海域が浅いところが多い欧州では着床式の普及が進んでいます。日本は領海と排他的経済水域(EEZ)を合わせた面積が世界6位の海洋大国ですが、遠浅の海域が少ないため、洋上風力発電を将来の再生エネ拡大の切り札にするには浮体式の導入拡大が欠かせません。しかし、浮体式はまだ実証試験段階で技術が確立されておらず、実現には技術革新による大幅なコスト削減が必要となります。
2022年9月19日掲載