ビジュアル・ニュース解説

緊急事態に対応、憲法改正論議の機運高まる

2022.9.5 掲載
2022年7月の参院選で、憲法改正に前向きな自民、公明、日本維新の会、国民民主の4党が総議席数の3分の2以上を維持しました。改憲勢力は既に衆院で3分の2以上を占めており、改憲発議に必要な議席数を引き続き衆参両院で保ちました。ロシアのウクライナ侵攻などをきっかけに、非常時に政府の権限を強める緊急事態条項を憲法に盛り込むよう求める声が上がっており、改憲論議は現実味を増しています。今回は憲法改正にはどのような手続きが必要か、なぜ改憲が議論になっているのかなどについて解説します。

2.新型コロナ感染拡大やロシアのウクライナ侵攻を機に緊急事態条項の議論活発に

2.新型コロナ感染拡大やロシアのウクライナ侵攻を機に緊急事態条項の議論活発に
 現憲法はGHQに押し付けられたとして、以前から自主憲法の制定を求める声がありました。自民党は1955年の立党時に「現行憲法の自主的改正をはじめとする独立体制の整備」を掲げ、憲法改正を党是としてきました。自民党は(1)自衛隊の明記(2)緊急事態対応(3)参院の合区解消(4)教育の充実――を改憲項目に掲げています。これまで最大の争点だったのが9条の改正による自衛隊の明記です。9条は2項で「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」と定めていますが、国は自衛のための「必要最小限度の実力」の保有は禁止されていないとし、自衛隊を合憲と解釈してきました。憲法への自衛隊の明記で合憲であることを明確にすることを目指しています。これに対し、立憲民主党や共産党などは9条の改正に反対しています。
 新型コロナウイルスの感染拡大やロシアのウクライナ侵攻への対処をめぐって憲法改正の論点に浮上したのが、大規模災害などの非常時に政府の権限を強める緊急事態条項の新設です。日本国憲法は緊急事態条項を持たないため、自民党などは米欧のように非常時に臨機応変に私権制限ができず迅速に対応できない恐れがあると指摘しています。
2022年9月5日掲載