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進む円安、企業や家計の負担増す

2022.8.1 掲載
円安が急速に進んでいます。2022年7月には一時1ドル=139円台に下落し約24年ぶりの円安・ドル高水準をつけました。円安はこれまで日本経済の追い風になるとされてきましたが、資源高に円安が加わって輸入物価が高騰。企業や家計の負担が増して「悪い円安」との見方が広がっています。今回は円相場が決まる仕組みや円安が及ぼす影響、円安が進む背景などについて解説します。

1.為替レートは通貨の需要と供給に応じて変動

1.為替レートは通貨の需要と供給に応じて変動
 外国からモノを買うには原則、その国の通貨(外貨)が必要です。例えば米国へ旅行に行くなら、現地で買い物などをするためにあらかじめ日本円を米ドルに交換します。国内企業が海外の企業と取引をするときも外貨がいることがあります。輸出入企業や個人などの外貨交換は一般的に銀行が仲介しており、銀行などが必要な通貨を他の通貨と交換するのが外国為替市場です。外国為替市場に株式のような取引所はなく、銀行などの市場参加者は「インターバンク市場」と呼ばれる市場でそれぞれ相対取引をしています。交換割合は為替レートと呼ばれ、通貨の需要と供給に応じて変動します。
 取引に参加する銀行などは通常、複数の相手と相対で取引できる仕組みを整えており、それぞれ希望するレートと通貨の量を提示。売り注文や買い注文に応じる相手があれば取引が成立します。銀行などは条件を自動で照らし合わせるシステムで、有利な相手を選んで取引をしています。取引単位は100万ドルなどと大きく、参加には資金力が必要です。外国為替市場は24時間開いており、日本時間の月曜早朝から土曜日の早朝まで動いています。主に取引する銀行がある都市名で取引時間が区切られ、日本時間の午前8時ごろから午後5時ごろまでの取引が東京外国為替市場です。日本での取引が落ち着くと、取引の中心はロンドン、ニューヨーク、ウェリントン(ニュージーランド)と移ります。銀行以外の取引を銀行が仲介する市場は対顧客市場と呼ばれます。
 よく目にする円とドルの為替レートでは、例えば1ドル=100円だったのが1ドル=110円になれば円安・ドル高、1ドル=90円になれば円高・ドル安です。見た目の金額が減っているのに円高なのは、より少ない円でドルが買えるからです。為替相場はなぜ上昇したり、下落したりするのでしょうか。為替相場は基本的には通貨の需給で決まります。通貨は多くの人が必要とすれば高くなり、不要なら安くなります。例えば日本からの輸出が増えれば、輸出で得た外貨を円に戻す量が増えて円高の要因となります。外国の株式を購入する人が増えれば、円を購入に必要な外貨に替えるため円安の要因となります。これらの実際に使うことが前提の取引である実需のほか、為替レートの動きから利益を得ることを目的にする取引である投機・投資もあります。ヘッジファンドや証券、保険会社、年金基金などの機関投資家が手掛けており、個人投資家による外国為替証拠金(FX)取引も含まれます。
2022年8月1日掲載