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進むインフレ、スタグフレーションへの懸念強まる

2022.7.18 掲載
物価の上昇が続くインフレが世界で加速し、主要な中央銀行がインフレを抑制するため相次ぎ利上げに動いています。米連邦準備理事会(FRB)は2022年3月以降3度にわたり利上げし、欧州中央銀行(ECB)も同年7月に利上げに踏み切ります。ただ急速な利上げで、物価が高いまま景気後退が進む「スタグフレーション」への懸念も強まっています。今回は日銀を含む世界の中銀が警戒するスタグフレーションについて解説します。

1. 資源高や供給不足による素材価格の上昇が一因に

1. 資源高や供給不足による素材価格の上昇が一因に
 スタグフレーションは景気後退で賃金が上がらず失業率が高まるなか、物価が上昇する経済状況のことです。景気の停滞を意味する「スタグネーション」と物価上昇を表す「インフレーション」を組み合わせた造語です。
 インフレは景気が良くなるとモノやサービスの需要が供給を上回り、値段が上がるのが一因です。この場合、賃金が増えて消費者の購買力が高まり、消費が伸びる好循環が生まれます。これに対し、スタグフレーションは景気後退で賃金が上がらず失業率が上昇するなか、物価が上がる厳しい経済状況です。この状況下では消費者は家計を切り詰めて消費を減らさざるをえません。そうするとモノが売れなくなって企業の業績が悪化し、不況が続く悪循環に陥ります。
 スタグフレーションが起こるのは、主に石油などの資源高や供給不足による素材価格の上昇が、それらを原料とする製品の値上げに波及することが一因です。1970年代の石油危機の時に日本や米国などで起きたスタグフレーションは、石油輸出機構(ОPEC)の加盟国が原油の輸出価格の大幅な引き上げと供給制限をしたことで原油の供給が不足。3カ月で原油の国際価格が4倍近くに高騰したことが要因でした。
2022年7月18日掲載