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進むインフレ、スタグフレーションへの懸念強まる

2022.7.18 掲載
物価の上昇が続くインフレが世界で加速し、主要な中央銀行がインフレを抑制するため相次ぎ利上げに動いています。米連邦準備理事会(FRB)は2022年3月以降3度にわたり利上げし、欧州中央銀行(ECB)も同年7月に利上げに踏み切ります。ただ急速な利上げで、物価が高いまま景気後退が進む「スタグフレーション」への懸念も強まっています。今回は日銀を含む世界の中銀が警戒するスタグフレーションについて解説します。

3.一段の円安でインフレ圧力が高まることも

3.一段の円安でインフレ圧力が高まることも
 日本は資源高により電気代やガソリン価格などエネルギー関連が大きく上昇し、原材料高で食料品も値上がりしており、22年5月の消費者物価指数は変動の大きい生鮮食品を除く総合指数が前年同月比2.1%上昇。上昇率は2カ月連続で2%を超えました。ただし主要な先進国と比べると、米国は同月に8.6%と3カ月連続で8%を超えており、ユーロ圏は8.1%、英国も9.1%で、日本の物価上昇はまだ低い水準です。
 これに対し、日銀は22年6月の金融政策決定会合で大規模な金融緩和の維持を決めました。景気はまだ回復途上で、緩和縮小は時期尚早とみたためです。しかし、世界の主要中銀が利上げに動くなか緩和を続けることで米欧との金利差が拡大。一段の円安を招いて輸入品が値上がりし、インフレ圧力を高めかねません。資源高と円安が輸入価格を押し上げれば、輸出産業を除き企業の収益環境は厳しさを増します。円安による値上げラッシュが景気悪化につながれば、日銀は景気も賃金も上向かないなか利上げを迫られる恐れがあります。日本がスタグフレーションに陥ることへの懸念は杞憂ではありません。
2022年7月18日掲載