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進むインフレ、スタグフレーションへの懸念強まる

2022.7.18 掲載
物価の上昇が続くインフレが世界で加速し、主要な中央銀行がインフレを抑制するため相次ぎ利上げに動いています。米連邦準備理事会(FRB)は2022年3月以降3度にわたり利上げし、欧州中央銀行(ECB)も同年7月に利上げに踏み切ります。ただ急速な利上げで、物価が高いまま景気後退が進む「スタグフレーション」への懸念も強まっています。今回は日銀を含む世界の中銀が警戒するスタグフレーションについて解説します。

2.インフレ抑制を優先し主要な中銀が相次ぎ利上げ

2.インフレ抑制を優先し主要な中銀が相次ぎ利上げ
 現在、2022年2月から始まったロシアのウクライナへの侵攻とそれに対する米欧などの経済制裁で、資源高によるインフレが世界で加速しています。ロシアは世界の石油の1割、天然ガスの2割を供給するエネルギー生産国で、ロシアとウクライナは小麦の世界輸出の3割、トウモロコシの2割を占めています。世界の主要な中央銀行は景気よりインフレ抑制を優先し、相次ぎ利上げに動いています。FRBは22年3月にゼロ金利政策を解除して政策金利を0.25%引き上げ、同年5月には0.5%、同年6月には0.75%と利上げ幅を拡大しました。ECBは同年7月に量的緩和政策を終了し、11年ぶりに0.25%の利上げに踏み切る方針です。英国やスイスも同年6月に利上げしました。
 利上げは金利を上げて企業や個人が資金を借りにくくすることで、景気の過熱を抑えるのが目的です。ただ、世界の景気は盤石とは言えません。世界銀行は22年6月に公表した経済見通しで、22年の世界経済の実質成長率を2.9%とし、同年1月時点から1.2ポイント下方修正しました。とりわけロシア産の資源への依存度が高い欧州は厳しい状況です。ECBが同年6月に公表した経済見通しでは、ユーロ圏の22年の成長率を2.8%とし、前回の同年1月から0.9ポイント引き下げました。
 利上げを急ぎ過ぎれば、景気を冷やし過ぎてインフレが収まらないうちに景気後退に入ってスタグフレーションが起きます。世銀も経済見通しで、低所得国などがスタグフレーションに陥るリスクがあると警戒を促しました。
2022年7月18日掲載