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ロシア、ウクライナへなぜ侵攻?

2022.4.18 掲載
ロシアが2022年2月、ウクライナへの軍事侵攻を始めました。ロシアは首都キーウ(キエフ)を数日で制圧する計画だったとみられますが、ウクライナ軍の強い抵抗などで侵攻はまだ続いています。ウクライナはどんな国でロシアはなぜ軍事侵攻したのか、侵攻によってどのような影響があるのかを解説します。

2.NATOにウクライナ加盟ならロシア国境に迫ることに危機感

2.NATOにウクライナ加盟ならロシア国境に迫ることに危機感
 19年に誕生したゼレンスキー政権は親欧米路線をとり、米国や西欧が主導する北大西洋条約機構(NATO)加盟への意欲を公言。親ロシアに戻そうとするロシアと対立が深まりました。NATOには1999年にポーランド、ハンガリー、チェコが、2004年にはルーマニア、スロベニア、バルト3国(エストニア、ラトビア、リトアニア)、プルガリア、スロバキアが加盟。旧ソ連のウクライナやジョージアも加盟を目指しており、ロシアのプーチン政権はNATOがロシア国境に迫ることに危機感を募らせました。プーチン政権はソ連崩壊後に独立した各国への影響力を強め、かつての勢力圏を取り戻す「大国の復活」を狙っており、とりわけ地域大国のウクライナをベラルーシとともにNATOとの緩衝地帯として重視。NATOが08年の首脳会議でウクライナとジョージアの将来の加盟を認めたことに反発し、米欧にウクライナをNATOに加盟させないことの確約を要求しました。欧米はこの要求を拒み、ロシアは22年2月にウクライナへ軍事侵攻しました。
 軍事侵攻したロシアに対し、欧米や日本などは厳しい経済制裁を科しました。ロシア中央銀行が保有する外貨建て資産を凍結したほか、米欧が主導する銀行決済網「国際銀行間通信協会(SWIFT)」からロシアの大手・中堅銀行を排除。ハイテク製品の輸出も禁止しました。外資企業のロシア事業の撤退・縮小も相次ぎ、エール大学経営大学院の調査によると既に600社を超えました。これによって、ロシア経済は急激に収縮しており、世界銀行の予測では22年の実質成長率はマイナス11.2%に陥り、ソ連崩壊の余波に迫る打撃を被る見通しです。通貨ルーブルは急落してインフレも進行。ロシア経済省が発表した22年3月25日時点のインフレ率は前年比15.66%と6年半ぶりの高水準となりました。
2022年4月18日掲載