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株式相場、グロース株からバリュー株へ移行の兆し

2022.3.21 掲載
世界の株価が2022年に入って不安定な値動きを続けています。直近の要因はロシアのウクライナ侵攻による情勢の悪化で景気の先行き不安が強まったことですが、それ以前から米国の長期金利の上昇を受けたグロース(成長)株からバリュー(割安)株への資金シフトも影響を与えています。今回はグロース株とバリュー株について解説します。

3.金利の上昇でグロース株が下落しやすく

3.金利の上昇でグロース株が下落しやすく
 グロース株は金利の上昇に伴って価格が下落しやすいといわれます。実際に2022年に入って、米国ではインフレによって長期金利が上昇し、米連邦準備理事会(FRB)は22年3月にも政策金利引き上げに踏み切る公算が大きい中で、国債よりリスクの高いグロース株の割高感が強まって株価が下落。米国の影響を受けやすい日本でも同様の傾向がみられます。
 金利の上昇がグロース株の下落をもたらす理由はいろいろあります。グロース企業は一般的な企業よりも収益拡大が速く、市場で調達する資金の金利が低ければ、支払う金利を収益増加率が上回る利ざやが生まれます。そのため、金利が低い場合、グロース企業は積極的に資金を借り入れて事業や設備投資に充てることでさらに成長率を高めようとします。一方、利上げで成長率の金利に対する利ざやが縮小したりマイナスになったりすれば、企業は借り入れを控えて事業拡大に使える資金が少なくなるため、業績の悪化や下方修正が予想されて株価下落をもたらします。その局面では、リスクを覚悟でグロース株を購入・保有するよりも、安定した運用が見込める国債の購入に資金をシフトする投資家が多くなります。
 株式指数算出会社のМSCIが算出した、世界のバリュー株を組み入れた「全世界割安株指数」を、グロース株の「全世界成長株指数」で割った値(1996年末=1)は22年2月3日時点で0.57で、その推移を見るとほぼ10年ほどのスパンでバリュー株優位とグロース株優位が入れ替わる様子がわかります。「資源高と金利上昇が起きた2003~07年のようなバリュー相場が訪れる可能性がある」と指摘する専門家もいます。一方、専門家の中には「現在の米国のインフレは商品・サービスに対する需要拡大が引き起こしたもので、将来の売り上げにインフレ分を上乗せできる成長企業であれば、金利上昇は不利な材料とはならない」として、金利高が必ずしもすべてのグロース株の下落につながるわけではないと指摘する声もあります。
2022年3月21日掲載