ビジュアル・ニュース解説

東証の株式市場再編、消える1部

2022.2.21 掲載
東京証券取引所の4つの株式市場が2022年4月にプライム、スタンダード、グロースの3市場に再編されます。市場再編によって各市場に上場する企業の特色を明確にするほか、最上位市場の基準を厳格化して企業価値の向上を促します。今回は東証の市場が再編でどのように変わるのかをその背景などを含めて解説します。

1.4つの株式市場をプライム・スタンダード・グロースに

1.4つの株式市場をプライム・スタンダード・グロースに
 国内の証券取引所は東京、名古屋、札幌、福岡にあり、そのうち東京証券取引所が最大です。東証の株式市場には1部、2部と新興企業向けのジャスダック、マザーズの4市場があります。東証はこの4市場を2022年4月に企業の規模や流通する株式の価値などによってプライム、スタンダード、グロースの3市場に再編します。
 プライム市場は海外の投資家の売買対象となる規模や経営の質を備えたグローバル企業向けです。対象は企業が発行する株式のうちグループ企業や創業者などが保有する株を除いた、市場に出回りやすい株である流通株式の比率が35%以上、流通株式数と株価を掛けた流通株式時価総額が100億円以上などの条件を満たす、主に現在1部市場に上場する企業です。グロース市場はこれから高い成長が期待できる一方、事業上のリスクは大きい企業が対象で、流通株式の比率は25%以上、流通株式時価総額は5億円以上などが上場基準です。スタンダード市場はグロース市場の企業より事業が安定しており、プライム市場の企業より規模が小さい企業が集まります。上場基準は流通株式の比率はグロースと同じ25%以上、流通株式時価総額は10億円以上などです。
 また市場再編に合わせて企業統治指針(コーポレートガバナンス・コード)が改定され、プライムを選ぶ企業は独立した社外取締役の比率を3分の1以上にすることや気候変動リスクの開示などが求められます。
 市場再編の狙いは主に2つあります。ひとつは各市場の違いを投資家にわかりやすくし。お金を市場に呼び込みやすくすることです。新興企業向け市場には現在ジャスダックとマザーズがあり、両市場は役割が重複し違いがわかりづらくなっています。13年に東証と大阪証券取引所が統合した際、大証にあったジャスダックをそのまま維持したためです。もうひとつは最上位の市場のブランドを高めることです。東証1部は日本を代表する優良企業が集まりますが、近年は上場する企業数が増え過ぎ、必ずしも世界に誇れる市場とはいえないのが実情です。上場企業数は22年1月末時点で2184社と、1990年から30年余りで1000社近く増えました。東証1部上場時に求められる時価総額が250億円で、2部やマザーズからの市場変更なら40億円なのに対し、上場廃止基準の時価総額は大幅に低い10億円で、これに安住して経営努力を怠る企業もあります。成長するための資金を得るという上場本来の意味はかすみ、公募増資など資本調達をしたことがない企業は2割に上っています。このためプライムは上場と廃止の基準を厳しくすることで、企業価値を高める努力を企業から継続的に引き出すことを狙っています。
2022年2月21日掲載