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改正個人情報保護法、プライバシー保護など個人の権利拡大

2021.12.6 掲載
個人の氏名や顔写真などの個人情報を取り扱うインターネットのサービス普及に対応し、世界で個人情報保護の規制強化が進んでいます。国内でも個人データの不当な利用の停止請求や罰金の上限引き上げなどを盛り込んだ改正個人情報保護法が成立し、2022年4月から全面施行されます。今回は改正個人情報保護法の概要や改正の背景などについて解説します。

1.利用停止権を導入、海外移転には本人の同意義務づけ

1.利用停止権を導入、海外移転には本人の同意義務づけ
 個人情報とは個人に関する情報で、他のデータと容易に照らし合わせて個人を特定できる情報を指します。氏名や顔写真のほか、住所、生年月日、購買履歴などが対象です。企業などが個人情報を集めたり、事業活動に利用したりする際のルールを定めるのが個人情報保護法です。2003年に制定された個人情報保護法は3年ごとに見直すことになっており、改正法が20年6月に成立し22年4月に全面施行の予定です。
 改正法はプライバシー保護など個人の権利を拡大しました。必要のなくなったデータの利用停止を本人が企業に求められる「利用停止権」を導入。個人の権利を侵害する恐れがある場合などに利用停止を請求できるようになり、データ流通量の増加で本人が把握できないところで分析などに利用されるのを防ぎます。また、ウェブの閲覧履歴を記録した「クッキー」など、単体では個人情報ではないデータでも、企業が個人と照合して使う場合は本人の同意を取ることを義務づけました。個人情報を海外に移す際にはデータの移転先の国の明示や同意取得を求めています。
 その一方で、個人を特定しない形でデータを分析に使いやすくする制度も盛り込まれました。他の情報と照合しないと個人を識別できないよう、氏名を削除するなどしてデータを加工する「仮名加工情報」の制度を創設。社内での分析などへの利用に限って本人からの開示や利用停止請求の対象から外しました。これによって小売業の企業が各店舗から集めた顧客の年齢や性別、購入時間帯などの購買履歴を社内で分析して商品開発に生かすことなどができるようになります。
 このほか、一定以上の個人情報を漏洩(政令・規則で「1000人を超える漏洩」と規定)し、個人の権利に害を与える恐れがある場合は速やかに個人情報保護委員会への報告と本人への通知を義務づけるとともに、企業への罰金の上限を1億円に引き上げました。
2021年12月6日掲載