株主優待を実施する企業数は2010年代に入ってから増加が続いていましたが、ここにきて廃止する動きが広がっています。野村インベスター・リレーションズの調べによると、20年度に優待を廃止した企業は75社で、新設した企業の48社を上回り、実施する企業数はリーマン・ショック後の09年度以来11年ぶりに減少しました。その原因の1つは新型コロナウイルスの感染拡大による業績悪化です。外出自粛や巣ごもり消費など日常生活が変わり、企業の経営環境は大幅に悪化。それに伴って株主優待の廃止、縮小の傾向が強まりました。この動きは21年度も続いており、21年4〜5月の2カ月間に廃止が11件に対し、新設は1件だけでした。
またコロナ禍以前から、株主優待の活用が難しい海外の投資家や機関投資家から「株主優待は株主への利益還元としては不公平」との批判があり、優待を廃止してその資金を配当などに充てる企業もあります。機関投資家は金券などの優待を資産管理銀行を通して売却しますが、保有株数が多い機関投資家のリターンは個人投資家より相対的に小さくなります。優待には上限があり、保有する株数に比例して優待が増えるわけではないからです。このほか、優待券の偽造も増えており、その対策も企業の負担になっています。