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個人投資家に人気の株主優待、コロナ禍響き一転減少

2021.11.1 掲載
株主に自社の商品や金品などを贈る株主優待制度。個人投資家には株主優待を目当てに株式投資をする人も少なくありません。株主優待はこれまで増加傾向でしたが、新型コロナウイルス禍による企業の業績悪化などの影響で一転減少しました。今回は株主優待の概要や減少に転じた背景などについて解説します。

1.自社の商品や金券の贈呈が中心、イベント招待や寄付も

1.自社の商品や金券の贈呈が中心、イベント招待や寄付も
 株主優待とは企業が自社の株式を一定数以上保有する株主に対して年に1、2回、自社の商品や金券などを贈る制度です。贈るのは自社の製品やサービスの優待券、割引券が多いですが、カタログギフトや地域の名産品、QUОカード、図書カードを配ることもあります。金品の代わりに、工場見学、スポーツ大会、コンサートなどイベントへの招待や社会貢献に寄付する優待もあります。株主優待は企業の株主への利益還元策のひとつで、株主にとって株の値上がり益や配当と並ぶリターンの1つといえます。東京証券取引所1部上場企業の平均配当利回りが約1.7%なのに対し、金券などの優待を加味した実質利回りでは7%を超える銘柄もあります。
 株主優待は株主に自社への理解を深めてもらい、会社の「ファン」になることを促す狙いもあります。これによって簡単に株を売らない株主が増えれば、株価の安定につながります。株の保有が長期間にわたったり、多く保有したりすると、優待が手厚くなる会社もあります。株主優待を目当てに投資する銘柄を選ぶ個人投資家は少なくなく、株主優待の新設や廃止、縮小などきっかけに株価が動くこともあります。ただし、株主優待はすべての上場企業が行っているわけではなく、2021年3月末時点で実施しているのは1516社で全体の約4割です。
 株主優待を受け取るには会社ごとに定める「権利確定⽇」に、あらかじめ決められた株数を保有する必要があります。株は買ってから株主名簿の名義が換わるのに2営業日かかるため、権利確定日の2営業日前までに株を買わなければなりません。多くの企業は決算期末を権利確定日にしています。
2021年11月1日掲載