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海の環境汚染や温暖化ガス発生、プラスチックごみ削減機運高まる

2021.10.18 掲載
プラスチックごみの削減やリサイクルの取り組みを強化する「プラスチック資源循環促進法」が2021年6月に成立し、小売店や飲食店に使い捨てのストローやスプーンなどの削減を義務付けることが決まりました。日本のプラスチックごみのリサイクル率は8割を超えますが、焼却して熱を回収する処分の割合が高く国際基準では低い水準です。今回はプラスチックごみが抱える問題と処理の現状などについて解説します。

1.地球温暖化や海の生態系を含む環境汚染の原因に

1.地球温暖化や海の生態系を含む環境汚染の原因に
 プラスチックは衛生的とされ1950年代に本格的な利用が始まり、生活に欠かせない素材となっています。利用拡大につれて廃棄されるプラスチックが増え、その処理が問題となっています。石油から作られるプラスチックは燃やすと二酸化炭素(CO₂)を発生して地球温暖化の原因となるうえ、海に流出すれば簡単に分解せず、大きさ5ミリメートル以下の微細なマイクロプラスチックとなって海中を浮遊して生態系を含む環境汚染を引き起こします。プラスチックごみは通常、回収されてリサイクルされたり、焼却や埋め立てで処分されたりしますが、投棄されたものなどは海に流出します。海に流れ込んだプラごみは紫外線や波による劣化などで壊れてマイクロプラスチックとなり、魚介類などが体内に取り込み蓄積してしまいます。
 世界経済フォーラム(WEF)は2016年、世界の海に漂うプラごみの量がこのまま増え続ければ、50年までに重量換算で魚の量を超すと予測する報告書を出しました。報告書によると、1964年に1500万トンだった世界のプラスチック生産量が2014年には3億1100万トンと20倍以上に増加。20年後の34年にはさらに倍増し、毎年少なくとも800万トンのプラごみが海に流出するとみています。
 プラごみ問題を解決するため、18年に開かれた主要7カ国(G7)首脳会議(サミット)は30年までにすべてのプラスチックを再利用や回収可能なものにし、40年までに100%回収を目指す「海洋プラスチック憲章」を採択しました。ただし、欧州諸国とカナダは署名しましたが、日本と米国は署名しませんでした。20年の20カ国・地域(G20)首脳会議ではプラごみによる新たな海洋汚染を50年までにゼロにする目標「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」を採択しました。
 一方、これまで先進国のプラごみを受け入れてきた新興国は環境汚染の深刻化で輸入規制に動いています。リサイクル用プラスチックの最大の受け入れ国だった中国が17年に輸入を禁止。そのあおりでプラごみは東南アジアに向かいましたが、東南アジア諸国でも環境汚染が広がり、各国は輸入規制を強めています。19年には有害廃棄物の国際的な移動を規制する「バーゼル条約」の締約国会議が、汚染されたプラごみの輸出に相手国の事前同意が必要とする条約改正で合意しました。しかし、汚染されておらずリサイクルできるプラごみは条約の規制の対象外で、廃プラスチック問題の解決に大きな効果はないとみられます。
2021年10月18日掲載