ビジュアル・ニュース解説

新型コロナ拡大、米発「ウッドショック」で住宅向け木材が高騰

2021.10.4 掲載
新型コロナウイルスの感染拡大は意外なところにも影響を及ぼしています。そのひとつが住宅に使う木材価格の高騰です。米国では在宅勤務が広がり、人が密集する都心部から郊外への転居が増えたことなどによって起きた住宅ブームで木材需要が急拡大して需給が逼迫し価格が上昇。それが日本国内にも波及し、輸入材だけでなく国産材の価格も高騰しています。今回は「ウッドショック」と呼ばれる木材価格の上昇とその背景について解説します。

2.輸入材の価格高騰で国産材の代替需要高まる

2.輸入材の価格高騰で国産材の代替需要高まる
 ウッドショックは日本の住宅用木材の価格にも波及しました。農林水産省の木材流通統計調査によると、木造住宅の梁(はり)や柱に使う北米産の米松平角(3.65~4メートル×10.5~12センチ×24センチ)の1立方メートルあたりの価格は、20年の全国平均が6万3400円だったのに対し、20年11月以降上昇が続き21年3月には7万円を突破。同年4月以降は前年同月比20%以上上昇し、同年8月には前年同月比で4万9200円(79%)高い11万1300円まで値上がりしました。
 米松などの輸入材は価格高騰で入荷が減ったため、国産の製材品の代替需要が高まり価格が急騰しました。スギ正角(乾燥材、3メートル×10.5センチ角)は20年の全国平均価格が1立方メートル6万6700円だったのに対し、21年4月に前月より8600円高い同7万5300円に、同年8月には同13万600円まで上昇しました。20年の全国平均価格が1立方メートル8万5500円だったヒノキ正角(同)も21年4月に前月比7200円高の同9万3500円をつけ、同年8月には同16万2300円に急上昇しました。
 木造住宅の建築着工が底入れ傾向にあることも製材品価格の高騰の一因です。国土交通省の建築着工統計調査によると、木造住宅の着工戸数は21年4月から7月まで4カ月連続で前年を上回っています。
 製材品の不足で原料の丸太価格も高騰しました。ヒノキ丸太(14~22センチ×3.65~4メートル)の全国平均価格(工場着)は20年の1立方メートル1万7200円から21年4月には前月比900円(4.8%)高い同1万9800円に、同年8月には前年同月の2倍の同3万2100円まで上昇しました。
 林野庁の出先機関である各地の森林管理局は丸太の出材を増やそうと、国有林の伐採入札の前倒しを進めています。国有林から出る丸太は国産材の約15%を占めています。東北や関東などで国有林の立木の入札販売を当初の計画から前倒しすることで、事業者が例年より多く落札し、伐採できるようにします。ただ夏から秋にかけては豪雨や台風の到来が多く、山から丸太を搬出しにくいため、出材量が当面どこまで増えるかはわかりません。
 木材価格の高騰で住宅メーカーは木造住宅の値上げに動いています。大和ハウスが21年6月から戸建て住宅の一部の建築費用の見積もりに木材価格の上昇分を数十万円程度上乗せしたほか、積水ハウスは自社で手がける木造住宅のすべての建築費用を1%値上げしました。
 21年9月に入り木材の輸入量が徐々に回復し、輸入材、国産材とも需給の逼迫感が薄れつつあり、価格の上昇が鈍り始めています。しかし、秋の建築需要期入りを控えて需要は旺盛との見方が強く、価格はなお強含みで推移しそうです。
2021年10月4日掲載