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新型コロナ、感染力強い変異ウイルス広がり感染急増

2021.9.20 掲載
新型コロナウイルスに感染力の強い変異ウイルスのデルタ型が現れて感染が急増しています。変異ウイルスとはどのようなもので、高齢者を中心に接種が進むワクチンは変異ウイルスに効果があるのでしょうか。今回は新型コロナウイルス感染の新たな動向について解説します。

1.デルタ型の変異ウイルス拡大で第5波到来

1.デルタ型の変異ウイルス拡大で第5波到来
 国内の新型コロナウイルス感染拡大は2021年7月に入って第5波が到来しました。全国で1万人を超える感染者が連日確認され、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の対象が広がりました。第5波ではこれまでとは比較にならないほど急速な感染拡大が起きており、その原因は従来のウイルスの構造が変化した変異ウイルスのひとつ、デルタ型の広がりです。
 新型コロナウイルスの遺伝情報は4種類の分子が約3万個並んだRNAという物質に刻まれています。この分子の並び方をもとにアミノ酸が作られ、アミノ酸が連なるとたんぱく質になります。ウイルスが感染した細胞の中で増殖するためRNAを複製する際に起きる、分子の一部が置き換わったり欠落したりするコピーミスが変異です。変異によって作られるアミノ酸の種類が変わってたんぱく質の構造や性質が変化し、その影響でウイルスの感染力などが変わることがあります。変異の起きる速さはウイルスの種類によって違いますが、新型コロナは約2週間に分子1つのペースで変化しています、変異型の種類が増えると、まれに感染力や病原性が強いウイルスが生まれます。
 デルタ型は世界保健機関(WHО)が「懸念される変異(VOC)」に分類して警戒を強めていた変異ウイルスのひとつです。VOCは感染力や重症度が増し、ワクチンの効果を下げるといった性質の変化がみられます。VOCに次ぎ、感染力やワクチンの効果などに影響を与える可能性がある「注意すべき変異(VОI)」には5種類を指定しています。国内では国立感染症研究所が国内の感染状況をもとに、独自に変異ウイルスをVOCとVOIに分類しています。VOCはWHOと同じですが、VOIにはカッパ型だけを指定しています。
 デルタ型は20年10月にインドで初めて確認されました。 従来のウイルスや同年9月に英国で見つかったVOCのアルファ型と比べ、感染力が5割程度強いとされます。米スクリプス研究所が遺伝子解析された感染者データを分析したところ、デルタ型は21年5月ごろから一気に流行し、2、3カ月で世界の新規感染の9割以上に達しました。厚生労働省の専門家会議の同年9月の資料によると、国内でも新型コロナウイルスはアルファ型からデルタ型にほぼ置き換わったとしています。
2021年9月20日掲載