ワクチンの接種拡大の一方で、新型コロナウイルス感染症の治療薬開発も進んでいます。これまでの治療は主に対症療法で、症状を緩和することで重い肺炎になるのを抑制するものです。これに対し、開発中の治療薬の多くは感染者の体内でウイルスに直接作用し、ウイルスの侵入や増殖の抑制、放出の阻害などによって症状を抑えます。
今、最も注目されているのは軽症・中等症向けの「抗体カクテル療法」です。米リジェネロン・ファーマシューティカルズが開発し、国内では中外製薬が販売する抗体カクテル療法は、新型コロナウイルスに感染し回復した患者から採取した抗体を別の抗体と混ぜて患者に点滴し、抗体をウイルスの表面に結合させて増殖を抑えます。治験では重症化や死亡のリスクが約7割減ったとされ、同年7月から医療機関で使われています。厚労省は感染者の急増で入院できない自宅療養者への使用も検討していますが、発症から原則7日以内に投与しなければ効果を発揮しないため、医療機関との連携などが課題となります。