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上昇基調続く米国株、動きを示す指標は?

2021.7.5 掲載
米国株の上昇基調が続いており、日本でも米国株への投資が増えています。コロナ禍で日本株は膠着感が強いのに対し、いち早く経済が回復して好調な米国株が注目されています。米国株の動向を示す株価指標にはどのようなものがあるのでしょうか。今回は米国株の代表的な指標について解説します。

1.米国を代表する30社の株価から算出するダウ平均

1.米国を代表する30社の株価から算出するダウ平均
 株価指数は証券取引所に上場する特定の銘柄群の株価を示す指標です。株価の上げ下げやその程度は銘柄によって違いますが、全体で見たときに株価がどう動いたかを知ることができます。株価指数に連動した運用成績を目指す投資信託など金融商品の組成や、投資家が運用成績を比較する基準に使われるほか、経済指標としても重視されます。日本の株価指数には日経平均株価や東証株価指数(ТОPIX)などがありますが、米国はダウ平均株価、ナスダック総合株価指数、S&P500種株価指数が代表的です。
 ダウ平均株価の正式名称は「ダウ工業株30種平均」で、「NY(ニューヨーク)ダウ」とも呼ばれます。輸送と公益事業を除く業種から選ばれた、米国を代表する30銘柄の株価を合算し「除数」と呼ぶ数値で割って算出します。株式分割などで企業価値に関係なく株価が動いた場合は除数を調整し、指数の連続性を保ちます。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルを発行するダウ・ジョーンズが1896年に算出、公表を始め、120年以上の歴史があります。当時の米国の産業構造を反映して鉱工業や農業関連などの12銘柄を対象に算出を開始。構成銘柄数は段階的に増えて1928年に30になりました。構成銘柄は産業構造の変化に合わせて入れ替えられており、情報通信業や医療などのサービス業を取り込みながら現在に至っています。
 算出開始時から続けて構成銘柄に入っている会社はありません。かつては構成銘柄のすべてがニューヨーク証券取引所(NYSE)への上場企業でしたが、ハイテクやバイオ関連を中心とする新興企業が多数上場するナスダックから99年にインテルとマイクロソフトが構成銘柄に入ったのを皮切りに、アップルなどナスダックへの上場企業6社が選ばれています。
 ダウ平均の特徴は構成銘柄のすべてが米国で影響力がある有名企業で、一般の人でも米株式市場や景気の動向を捉えやすいことです。ただ、株価が高い限られた銘柄で構成されるため、個別の企業の株価の動きが指数に影響を及ぼしやすく、中小企業も含めた米国市場の全体像を反映していないとの指摘もあります。また、株価だけを指数化しているため、企業価値の目安とされる、株価に発行済み株式数を掛けた「時価総額」は反映されません。
2021年7月5日掲載