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温暖化ガス排出削減、一気に目標高く

2021.6.7 掲載
温暖化ガス排出量を2050年までに実質ゼロにする目標を明記した改正地球温暖化対策推進法が2021年5月に成立しました。政府は脱炭素を実現するため同年4月、温暖化ガス排出量を30年度に13年度比で46%削減する目標を掲げ、これまでより削減幅を大幅に拡大しました。ただ、目標達成への道筋を明確に描けているわけではなく、対策の具体化が急務となっています。今回は脱炭素化の現状と課題について解説します。

1. 50年に温暖化ガス排出の実質ゼロ目指す

1. 50年に温暖化ガス排出の実質ゼロ目指す
 政府は2050年に温暖化ガス排出量を実質ゼロにする目標を20年10月に掲げました。温暖化ガス排出量は再生可能エネルギーや水素の利用拡大などで削減しますが、火力発電などを使い続けるためゼロにはなりません。残る分は二酸化炭素(CO₂)の森林などによる吸収のほか、火力発電所などが排出したCO₂を地下に埋めたり再利用したりすることで相殺します。政府は目標実現に向けて30年度の温暖化ガス排出量の削減目標を13年度比46%減とし、これまでの26%減から大幅に上積みしました。
 約190カ国・地域が批准し20年から適用が始まった気候変動対策の国際的枠組み「パリ協定」は、世界の平均気温の上昇を産業革命前と比べて2度未満に抑えることを目指すとともに、1.5度以下にすることを努力目標としました。18年の科学者らの報告によると、気温の上昇を1.5度以下に抑えるには30年までに世界全体の温暖化ガス排出量を10年比で45%削減し、50年までにゼロにする必要があります。既に米国や英国、欧州連合(EU)は50年までに、中国は60年までにそれぞれ温暖化ガスの排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を達成すると表明しており、主要排出国はカーボンニュートラルを目指しています。
 40カ国・地域の首脳が参加し21年4月に開かれた気候変動に関する首脳会議(サミット)では、米国が温暖化ガス排出を30年に05年比で50~52%削減することを表明するなど、30年に向けて削減の目標引き上げや加速を打ち出す国が相次ぎ、日本もこの動きに歩調を合わせました。
2021年6月7日掲載