ここに来て、投信をめぐる環境が変わりつつあります。老後資金への不安にコロナ禍が加わり、若年層を中心に投信の購入が活発になっており、投資の対象が先進国などの海外株ヘと移りつつあります。東京証券取引所がまとめた2020年度の投資部門別株式売買動向(東京・名古屋2市場の1部、2部と新興企業向け市場の合計)によると、日本株の最大の売り手は投信で、売られた金額から買われた金額を差し引いた売り越し額は3兆272億円と1983年度以降で最大でした。日経平均株価が21年2月に3万円台を回復したことで、日本株で運用する投信の基準価格が上昇し、相場の戻りを待って長期保有していた投資家による解約が増えました。
20年度は21年2月まで11カ月連続で日本株で運用する投信から資金が流出したのに対し、海外株を組み込んだ投信は同年3月まで9カ月連続で資金の流入が流出を上回りました。この背景には日本株で運用する投信を長期保有していた高齢の投資家の売りが増える一方、資産形成を始めようとする若者層は投資の対象に企業の成長率が高い海外株を選ぶ傾向が強いことがあります。SBI証券、楽天証券、マネックス証券、松井証券、auカブコム証券のネット証券大手5社の20年度の年代別口座開設数は20~30代が70万口座以上と飛び抜けて多くなっています。