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投資信託、海外株対象がけん引し残高拡大

2021.5.17 掲載
投資信託の2020年度末の運用残高が過去最高の76兆円に拡大しました。ただし、日本株が対象の投信からは資金が逃げており、海外株が対象への投資増が残高を引き上げました。投信の運用はどのような仕組みで、その長所や短所は何でしょうか。今回は投資信託について解説します。

2.少額から購入でき分散投資で運用効率が向上

2.少額から購入でき分散投資で運用効率が向上
 投信は少ない金額から購入でき、投資の対象を分散できるため運用効率を高められるなど、個別の株にはない長所があります。株は売買の最低株数である売買単位が100株で、高いものだと購入に数十万〜数百万円必要なものもあります。投信なら1万円程度で買えるものが多く、販売会社によっては100円から投資できるところもあるので、初心者でも気軽に投資を始められます。株式投資は値下がりで大きな損が出るリスクがありますが、投信は業種が異なるなど複数の株式銘柄や債券などに同時に投資する分散投資でこのリスクを抑えることができます。複数の銘柄に分散投資すれば、たとえ1つの銘柄で損を出しても他の銘柄の利益でカバーすることで損失リスクを小さくできます。
 「卵は1つのかごに盛るな」という投資の格言があります。すべての卵を1つのかごに盛ると、かごを落とせばすべての卵が割れてしまいますが、いくつかのかごに分けておけば、その1つを落としても他の卵が割れることを避けられるという分散投資の大切さを指摘したものです。投信は小口のお金を集めて大きな資金にして複数の株や債券に投資して運用するため、少額の購入でも分散投資ができます。
 このほか、経験やノウハウがある運用会社の専門家がどの銘柄にどれだけ投資するのが最適かを見極めて運用するので、投資家は銘柄の情報収集をしたり、市場の動きを追ったりする負担が軽くなります。
 一方、投信は投資を運用のプロに任せるため、保有額に応じた運用・管理費用である信託報酬や、買うときに販売会社に支払う購入手数料などのコストがかかります。投信に組み入れられた銘柄の株価が大きく動かない期間が長く続けば運用成績が上がらず、運用コストばかり膨らんで資産が目減りすることもあります。投信を選ぶときには運用コストをしっかり点検することが重要です。
 投信は上場されている株のように、変わる価格に応じてタイムリーに売買することはできません。売買注文の時点では価格がわからない方式が採用されており、売買の基準価格がわかるのは一定の日時を経た後です。このため「今が安値だ」と思って買い注文を出したのに実際の購入価格が上がったり、逆に「高値だ」と思って売り注文を出したのにそれより低い価格で換金することになったりすることがあります。
2021年5月17日掲載