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新型コロナ感染「第4波」の恐れ、ワクチン接種急ぐ

2021.4.19 掲載
新型コロナウイルスのワクチン接種が医療従事者に続き、2021年4月から高齢者を対象に始まりました。新型コロナ感染の特効薬がまだない状況下ではワクチン接種が有効な対策となります。ワクチンとはどのようなもので、新型コロナワクチンはこれまでのワクチンとどのような違いがあるのでしょうか。ワクチン接種の現状も含めて解説します。

2.新型コロナのワクチンはウイルスの遺伝子情報を活用

2.新型コロナのワクチンはウイルスの遺伝子情報を活用
 一般的なワクチンには生ワクチン、不活化ワクチン、トキソイドの3種類があります。生ワクチンは毒性を弱めたウイルスや細菌などの生きた病原体を使うため免疫力が強く、持続期間が長いのが特徴です。ただ、弱毒化しているとはいえ病原体を使用するので、軽い病気の症状が出ることがあります。生ワクチンには天然痘のほか、BCGやポリオ、麻疹(はしか)、風疹など数多くのワクチンがあります。不活化ワクチンはウイルスや細菌から、免疫をつくるのに必要な成分だけを取り出して体内で増殖できないようにしたものです。生まれる免疫力が弱いため複数回の接種が必要です。不活化ワクチンにはインフルエンザ、日本脳炎、A型肝炎、B型肝炎、ジフテリアや百日せきなどの混合などのワクチンがあります。トキソイドは細菌がつくる毒素をとって無毒化したもので、代表的なものに破傷風やジフテリアのワクチンがあります。
 新型コロナのワクチンで高い有効性を示しているのは、ウイルスの遺伝子情報からつくる「メッセンジャー(m)RNAワクチン」と呼ばれる新しいタイプです。mRNAは細胞内で様々なたんぱく質を作らせる指令を出します。この性質を使って体内で新型コロナのたんぱく質を作り出し、免疫を担う細胞がそれを記憶することで本物のウイルスが侵入した際に素早く排除して感染を防ぎます。従来のワクチンは大量のウイルスや細菌などの培養や不活化に時間が必要で、生産に半年から1年近くかかります。これに対し、mRNAワクチンは化学合成によって1~2カ月で製造でき、変異ウイルスにも素早く対応できます。
 ただ、mRNAワクチンはセ氏マイナス20~80度の超低温環境で保管することが必要です。ヒトに実用化された実績がなく、安全性に不安も残ります。超低温保管を不要にするため、米バイオ企業などが原料を凍結させることで水分を抜き取り乾燥させる凍結乾燥の技術を使って、常温に近い環境で取り扱えるmRNAワクチンの開発を進めています。
2021年4月19日掲載