ワクチンは生物が持つ免疫システムを活用して感染症などを予防する医薬品です。感染症にかかると、原因となったウイルスや細菌などの病原体への免疫ができます。免疫ができれば、その感染症にかかりにくく、かかっても症状が軽くなる効果が期待できます。あらかじめ病原性を弱めたり、毒性をなくしたりしたウイルスや細菌を体内に投与することで病原体への抵抗力をつけるのがワクチンの仕組みです。
これまでにインフルエンザが流行する前にワクチンを接種したり、子供のときに結核のワクチンのBCGを接種したりした人がいるでしょう。このような感染症対策として最も効果があるとされるのがワクチン接種です。とりわけ、有効な治療薬がない感染症の予防にはワクチン接種に代わるものがありません。
世界で初めてつくられたワクチンは天然痘のワクチンです。40度前後の高熱や頭痛が出て、顔や頭部などに発疹ができる天然痘は感染力が非常に強く、死に至る病として紀元前から知られ、恐れられていました。治っても、顔面に傷痕が残ることが少なくありませんでした。牛などの感染症である牛痘に一度感染すると天然痘に感染しないといわれていたことから、英国の医師エドワード・ジェンナーが18世紀末、牛痘に感染した人の浸出液を接種する種痘を天然痘の予防法として発表。その後、改良が進んで世界に普及しました。種痘の広がりで天然痘の発生数は激減し、1980年には世界保健機関(WHO)が根絶を宣言しました。